516自動化は治具から

 組み立てを自動化するためには、組立対象となる製品の設計を変更する必要があります。自社内で製品を開発設計し、自社で製造する場合は比較的に容易に取り組むことが出来ます。しかし、EMSの様に受託生産の場合は、厄介なことにお客様に設計変更を依頼することになります。自動組立の世界的権威である牧野先生の著書の中に下記記述があります。

 製品設計の変更:「組み立てを自動化するためには、まず製品設計を変更しなければ駄目です。こちらにある品種のような積み重ね構造であれば、ロボットで何とか組むことができるでしょう。製品設計を担当する技術部と、製造を担当する生産技術部が一緒になって、一つのタスクフォースを作って、どういう構造の電子管(製品)が作りやすいのか検討する必要があります。その場合、構造を変えれば、多分特性も変わるでしょうから、今の製品を改良設計するというよりは、次の新しい製品を開発するという方がやりやすいことになりますね。」

 自動化は治具から:「そんなことは前途遼遠でいつのことになるか分からない。それよりも迫った自動化はどうするのだということになれば、まず良い治具を作ることですね。 ~中略~ このような少量生産では、自動化の動機をコストダウンよりはむしろ品質の安定ということに置くべきです。そのことによって、組立工数そのものの削減よりも、むしろ、検査工数の削減、材料歩留まりの向上といったことに狙いを定めるべきです。たとえば、かりに、現在の製品の歩留まりが50%であったとして、もし組立治具の採用や組み付け動作の機械化によって歩留まりが100%に上がれば、それだけでコストは二分の一にはる。そんなことをお考えになったことはありませんか。」

 以上、牧野先生の著書からです。組立作業には部品供給、組付け、締結などの一連の作業が伴い、それぞれの作業において治具の出来具合が生産性、品質に大きく影響を与えます。

 過去に、ハードディスク組立ラインを開発した経験があります。その中の設備の一つにカバーの7軸同時ネジ締め設備がありました。ハードディスクのケースの中に、媒体となる円板、ヘッドユニットなどを搭載し最後の工程に、弁当箱のふたのような四角いカバーを7つのネジで締結します。管理ポイントはケースとカバーの間にあるゴム製のパッキンが、均一に圧縮されることです。

 マニュアル作業の場合は、ネジを一本ずつトルクドライバーで締めていきます。締める手順は、対角線上に星を描くように行います。仮締め、本締め、増締めといったように7か所×3回の計21回のネジ締め作業を行っていました。7軸同時ネジ締め機は、カバーのネジ位置に合わせた7本の電動ドライバーをロボットの先端に取り付け、規定のトルクまで一気に締め上げます。

 ネジの供給にはネジ振込治具を作りました。板金に7本のドライバーの位置に合わせて、ネジのバカ穴を7個あけます。そのバカ穴のグループのピッチをずらして、同じく穴をあけます。これを数十回繰り返して、穴だらけの板金製の治具ができます。ばらばらのネジをこの治具の上で数回ふるいをかけると、ネジの首下がバカ穴に入り、きれいに整列します。整列したネジを治具のままネジ供給トレイとして設備に投入します。

 良い治具を作ることは非常に重要です。また、自動化するにあたって自動化に向いた工法を検討することも重要だと思います。

SHIMAMURA ENGINEERING OFFICE

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