白内障手術は水晶体をとって、人工的な眼内レンズを水晶体の嚢の中に入れますので、調節力は完全になくなり、単焦点になります。お年寄りが老人性の白内障で手術をする場合は既に老眼がありますので、単焦点で遠くに合わせても、老眼鏡をかけるのは同じですから良いのですが、アトピー性白内障や、糖尿病白内障、外傷性白内障で若い人はそれまで、白内障でぼんやりしか見えなかったですが、遠くに合わせた眼鏡をかけても、近くは見えました。ところが、白内障手術で単焦点を入れると、濁りが取れるので、はっきり見えますが、近くは老眼鏡をはめないと見えなくなります。そのためには、多焦点眼内レンズが必要になります。
 一方、白内障がなくて、近視や遠視や乱視が強い人はLASIKやPRKをすれば、遠くは見えますし、水晶体は残してあるので、調節力がある場合は近くも見えます。しかし、LASIKやPRKでは削れる量に制限があります。そこで、-10D以上の高度近視を矯正する場合、たくさん削ることにより、球面収差が増える角膜矯正手術よりも、白内障手術をせずに、眼内に人工的な水晶体を入れる有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)を入れる方法があります。この方法は角膜を削りませんので収差が増えません。また、度数はいくらでも強くすることができます。ですからー20Dの近視の人がフェイキックIOLを入れることにより、術翌日から2.0でることもまれではありません。もちろん、この手術は白内障手術と同じように内眼手術で目の中にメスなどの器具を入れますので、LASIKやPRKのような外眼手術とは異なり、感染の心配がありますので、片眼だけの手術になります。通常は1週間後に他眼の手術を行います。フェイキックIOLは前房型のアルチザンタイプと後房型のICLに分かれます。私としては後房型は将来的に水晶体が厚くなり、IOLと接触して白内障のリスクが高くなります。それよりは、水晶体との接触の可能性がない、前房レンズを選択します。アルチザンタイプは30年以上の歴史を持ち、非常に安全な手術です。角膜内皮細胞数の減少も特に問題ありません。
-10D未満はLASIKあるいはPRK,-10D以上はフェイキックIOLを勧めています。