流石に人気の店


滝の流れが見える席はすべて満席だ


琴子は残念そうに見渡した


「やっぱりいっぱいだね」


「ああ、時間的にはまだましな位だろう」


「そうだね、普段だったら


凄ーく並ぶらしいもの」


琴子は大袈裟に言葉を間延びさせた


直樹はウエイトレスに案内される前に


ただひとつ空いている


場所的には影になる席を見つけ


琴子と向かった


琴子は、たもとをきちんと横にしながら


裾を直し座り込むと澄まし顔で


直樹に目線が集まるのを意識しながら


メニューに両手を添えてに渡した


そんな琴子を嬉しげに眺める直樹だ


「ね、入江君、パフェ食べていい?」


「別に何でも食べればいいだろ」


気持ちとは裏腹に醒めた言葉を発する直樹だが


琴子は気にすることなく


ウエイトレスに嬉々として注文した


頼んだにも関わわらずメニューを見ては


「これも美味しそう」何度も言っ


「太るぞ・・・


ま、貧弱な身体だから・・・」


「ま、ひ、どい・・・入江君、


私だって、出るとこ出てるんだから」


直樹はニヤリと笑いながら


「ま、結婚したらわかるか」


琴子が急に真っ赤な顔になりながら


「お見合い、ことわらないの」

直樹は眉を少し上げ身を乗りだし


「お前面白いこと聞くな。最初から断られる


つもりで見合いしたのか」


一層顔を近づけ右側の口角を上げた


「そう言う訳じゃないけど」


琴子は口を少し尖らせ


ボソボソと口を濁しながら


「だって・・・」


「お前ってわかった上で見合いしたんだ」


「えーっ、それって」


琴子はすっとんきょうな声を上げ身体を動かした


「お待たせいたしました」


琴子の前に差し出されたパフェどころじゃなく


まるで心臓発作を起こしたかのように


胸元を握り、奇妙に笑みをこぼし


「ほ、本当に?」


直樹は答えを無視するように


「パフェ食べないのか」


「え、え・・・あ、うん」


琴子が焦って握ったスプーンが揺れた


「じゃあ、あの、あの、それって、あの」


ガシャー・・・