カウンター一撃でベスト4に進んだホンジュラス五輪代表 | Purely Belter

カウンター一撃でベスト4に進んだホンジュラス五輪代表

リオデジャネイロオリンピックは大会9日目。サッカー競技は決勝トーナメントに入り、男子は現地時間の13日に準々決勝が行われました。

アジアで唯一ベスト8に残った韓国五輪代表は、ホンジュラス五輪代表と対戦。試合開始から押し気味に試合を進めましたが、後半に相手のカウンターに沈み、ベスト4入りはなりませんでした。準々決勝の4試合の中では最も注目度が低い試合だったでしょうが、非常に興味深い試合だったので取り上げたいと思った次第です。


■立ち上がりからボールを支配した韓国五輪代表だったが…

ドイツ五輪代表を押さえ、激戦のグループCを首位で通過した韓国五輪代表。その実力通り、立ち上がりからボールを支配して試合を進めます。FWソン・フンミン、ユ・スンウら海外組が個人技を活かしてゴールへ迫りました。

しかし、ホンジュラス五輪代表は守備時には5枚のDFを並べ、中盤の3選手もしっかりと引いて対応しました。韓国五輪代表は中盤の人数で上回り、また、個人の力でも勝っていたため、相手陣内の深い位置までボールを運ぶことはできましたが、その後シュートまで持ち込むことに苦しみました。ホンジュラス五輪代表は、相手のキープレーヤーには2人がかりで対応し、DFが抜かれた際は中盤の選手が戻ってボールを奪いました。

ホンジュラス五輪代表は、ボールを奪ってからはシンプルなカウンター攻撃。前線の2~3選手がサイドに流れ、攻撃を組み立てました。ボールは支配するものの、なかなかフィニッシュまで持ち込めなかった韓国五輪代表でしたが、前半終了間際から徐々にチャンスが増えてきました。ソン・フンミンの直接FKをはじめ、ユ・スンウのシュートもありましたが、GKルイス・ロペスの好守に阻まれました。

後半の立ち上がりも韓国五輪代表が良い形を作りました。前半は個人技で強引に攻め上がるシーンが目立ちましたが、後半はシンプルなワンタッチパスでペースを握りました。ホンジュラス五輪代表は、サイドでは2人がかりでプレスをかけてくるため、それにより空いたスペースを突いてチャンスを作りました。しかし、肝心なシュートが入らず。ソン・フンミンのシュートは、何度もGKロペスにセーブされてしまいました。

試合が動いたのは14分でした。自陣深くでボールをカットしたMFロメル・キオトが一気に攻め上がり、韓国五輪代表DFを引きつけると、右サイドを駆け上がっていたFWアルベルト・エリスにパス。これを受けたエリスが冷静に合わせ、ホンジュラス五輪代表が先制ゴールを奪いました。前半からなかなかシュートまでは持ち込めていませんでしたが、良い時間帯に教科書通りのカウンター攻撃が炸裂しました。

思わぬ形でリードを許した韓国五輪代表は、高さのあるFWソク・ヒョンジュン、DFチェ・ギュベクを投入しますが、最後までゴールを奪えず。試合は0-1でホンジュラス五輪代表が勝利しました。

■ブラジルで"ピント・マジック"が再び炸裂
ホンジュラス五輪代表を率いるのは、コロンビア人指揮官ホルヘ・ルイス・ピント監督。そう、2014年にブラジルで開催されたワールドカップで、コスタリカ代表をベスト8に導いた監督です。今回は同じく北カリブ海に位置するホンジュラス五輪代表で旋風を巻き起こしました。

W杯でのコスタリカ代表も堅守速攻をベースに戦いましたが、今回のホンジュラス五輪代表もしっかりとした守備からカウンター攻撃が目立ちます。守備時には5枚のDFが並び、中盤の選手も最終ラインをサポートします。ボールを奪てからは、サイドに張っている前線の選手にシンプルに送るというスタイルです。今回のホンジュラス五輪代表は、W杯でのコスタリカ代表以上に個人の能力は劣ります。粗削りな面も多いですが、選手は献身的なプレーで役割を全うし、結果を残しています。

やっていることはシンプルですが、選手にはそのスタイルが染みついている印象です。A代表監督も兼任するピント監督は、2014年12月に監督就任以降、リオ五輪世代の選手を多くA代表に招集・プレーさせました。この試合で攻守を連発したGKロペス、キャプテンのMFブライアン・アコスタらはピント体制でA代表の常連になった選手です。A代表と五輪代表を一体として強化した結果、今回のような素晴らしい戦いを披露できているのでしょう。

初のベスト4進出を果たしたホンジュラス五輪代表は、決勝進出を懸けてブラジル五輪代表と準決勝を戦います。徐々に調子を上げているブラジル五輪代表との対戦は非常にタフなものとなるでしょう。しかし、ブラジル五輪代表は、イラク五輪代表や南アフリカ五輪代表など、引いた相手に対して苦しみました。ホンジュラス五輪代表もこの試合のような粘り強い守備を続けると、再びサプライズを起こすことができるかもしれません。

■最後の場面で精度を欠き2大会連続のメダルはならず
ボール支配率64%、シュート数16を記録した韓国五輪代表でしたが、ゴールを奪うことができず敗退となってしまいました。グループリーグでは3試合で12ゴール。フィジー五輪代表戦という"ボーナスステージ"があったとはいえ、見事な攻撃を披露してきましたが、この試合では不発でした。

韓国五輪代表の前半終了間際~後半15分辺りまでの攻撃は見事でした。多くの選手がボールホルダーの近くに位置を取り、相手が寄せてきたところを上手くはたいてチャンスを作りました。ソン・フンミンには多くのチャンスが訪れましたが、最後のシュートが入らず、逆にカウンターから決勝ゴールを許してしまいました。特に後半の猛攻が実らなかった点は、非常に重く圧し掛かりました。

これは試合のコメンテーターを務めていた野地俊二アナウンサー、金子勝彦さんも話していたことですが、この試合の韓国五輪代表は、丁寧なプレーが印象的でした。相手のホンジュラス五輪代表が引いていたこともあるのでしょうが、特に前半は、中盤からパスで組み立て、前線の選手もゴール前で細かく繋いで打開を試みる場面が多くありました。前線は欧州でプレーする選手で固められており、器用な選手が多いため、丁寧なプレーが出たのでしょうが、もう少し"強引さ"があっても良かったのではないかと思います。

これまでの韓国代表は、"強引"で"我武者羅"な選手が多い印象でした。今回のような"丁寧さ"や"上手さ"が目立つチームも面白いですが、もう少し"韓国らしさ"が出た方が、相手としては戦いにくいのではないかと思います。今回のリオ五輪メンバーが、A代表でどのようなプレーを披露するのか、W杯予選で楽しみにしたいところです。

■決勝に進出する2チームは…!?
リオ五輪の男子サッカーはベスト4が出揃いました。ブラジル五輪代表、ホンジュラス五輪代表、ナイジェリア五輪代表、ドイツ五輪代表が決勝進出を懸けて準決勝を戦います。

グループリーグでは得点力不足に悩まされたブラジル五輪代表ですが、コロンビア五輪代表に2-0で快勝してベスト4入りとなりました。準決勝では、ホンジュラス五輪代表と戦います。エースのFWネイマールにもゴールが生まれ、徐々にエンジンがかかり始めています。しかし、ホンジュラス五輪代表は守備が堅く、身体能力も高いチーム。ゴールが奪えない時間が長く続くと、徐々にホンジュラス五輪代表のペースになるでしょう。早い時間帯でのゴールが求められます。

大会前はピッチ外で多くの問題を抱えていたナイジェリア五輪代表ですが、気付けばベスト4まで駒を進めてきました。非常に意外でしたが、ピッチ上で結果を出すあたりは流石です。一方のドイツ五輪代表は、爆発的な攻撃力でベスト4に進みました。A代表にも選ばれるMFマックス・マイヤーらの躍動が目立ちます。ナイジェリア五輪代表は、やはり守備に難点があります。ドイツ五輪代表の攻撃を食い止めることができるのか、注目ですね。

決勝に駒を進める2チームを予想するのならば、ブラジル五輪代表とドイツ五輪代表を挙げます。前者は、開催国として会場の後押しを受けることができますし、チームとしても徐々に上げてきている。前半のうちに先制ゴールを挙げることができれば、決勝に進めるでしょう。ドイツ五輪代表は攻守に安定感があります。ナイジェリア五輪代表も面白いチームですが、守備面で劣るため、勝利は厳しいのではないでしょうか。


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