大相撲ファンの期待を背負う横綱・稀勢の里関 | Purely Belter

大相撲ファンの期待を背負う横綱・稀勢の里関

2017年の初場所は、稀勢の里関の初優勝で幕を閉じました。14勝1敗という文句なしの成績、そして昨年までの安定した戦いぶりが評価され、横綱審議委員会において全会一致で横綱に推薦。それを受けて開かれた番付編成会議、臨時理事会にて稀勢の里関の横綱昇進が決定しました。実に19年ぶりの日本人横綱です。


■"唯一足りなかったモノ"を勝ち取り横綱昇進を決める
2004年の十一月場所で幕内昇進後、稀勢の里関は安定した強さを披露してきました。小結・関脇という守るのが難しい地位でも大負けせず、2012年初場所で大関に昇進してからも、休場はなく、カド番も1度だけ。常に優勝争いを盛り上げてきました。

横綱・白鵬関、日馬富士関、鶴竜関といったモンゴル人力士が強さを見せつける中、稀勢の里関は、"日本人横綱候補"の筆頭として多くの大相撲ファンの期待を集めてきました。しかし、毎場所優勝争いに絡みながらも、終盤戦で崩れ、賜杯を抱くには至らず。昨年も6場所中5場所で二桁勝利を挙げながらも、優勝はありませんでした。メディアやファンの間では、優勝が見えてきた時期での稀勢の里関のメンタルの弱さを指摘する声もありました。

迎えた初場所、稀勢の里関は初日から勝星を重ねてきました。中日で勝ち越しを決め、単独トップで折り返しを迎えました。9日目に大関・琴奨菊関に敗れたものの、13日目で大関・豪栄道関に不戦勝、悲願の初優勝が大きく近づきました。迎えた14日目、難敵・逸ノ城関を寄り切りで下すと、追っていた白鵬関が結びの一番で貴ノ岩関に不覚。これで、千秋楽を待たずして稀勢の里関の優勝が決まったのです。大関昇進後31場所での優勝、ついに賜杯を抱くこととなりました。

1場所優勝しての横綱昇進…これを受け、「甘い」「もう1場所優勝してから昇進すべき」との声も多くあるようです。しかし、個人的には、このような批判は適切でないと思います。昨年のみならず、大関昇進後の稀勢の里関の成績は素晴らしいものでした。しかし、唯一「優勝」だけが足りず、横綱昇進を見送られてきました。今場所その"唯一足りなかったモノ"を勝ち取ったわけですから、稀勢の里関は横綱に相応しいと思います。

■優勝を積み重ね、日本人力士を牽引してほしい!!
稀勢の里関が横綱に昇進したことにより、これで19年ぶりに日本人横綱が誕生することとなりました。本日、明治神宮にて横綱・稀勢の里関の土俵入りが行われましたが、1万8000人の一般客が集まったとのことです。これは、第65代横綱・貴乃花(現・貴乃花親方)の横綱土俵入りに次ぐ数字。このことからも、ファンの期待の高さがうかがえます。

稀勢の里関に求められるのは、言うまでもなく優勝を積み重ねることでしょう。上記のように、今回の横綱昇進に当たっては、優勝回数の少なさを指摘する声もあります。だからこそ、今後何度も賜杯を抱くことで、そうした批判の声を黙らせることが必要です。

また、日本人力士を牽引する役割も求められます。第68代横綱・朝青龍から暫く、モンゴル人力士をはじめとする外国人力士の強さが印象的でした。昨年は初場所で琴奨菊関、九月場所で豪栄道関が優勝しましたが、継続して優勝や優勝争いを演じる日本人力士が少ないのが現状です。来場所以降は、稀勢の里関が先頭に立ち、日本人力士が奮闘する場所を期待したいところです。

日本人力士で言えば、稀勢の里関と同部屋の小結・高安関は今場所11勝を挙げましたし、初土俵から3年足らずの前頭筆頭・御嶽海関も11番勝ちました。横綱昇進は勿論、三役を守り続けること、大関に昇進することのハードルも非常に高い。険しい道のりですが、稀勢の里関に続く力士が出てきてほしいですね。

■激戦が予想される三月場所…賜杯を抱くのは!?
稀勢の里関の横綱昇進により、三月場所は4横綱となります。番付に4横綱が名を連ねるのは、2000年三月場所以来、17年ぶりのことです。来場所はこれまで以上に激しい優勝争いが展開されることでしょう。

暫く優勝から遠ざかっている白鵬関をはじめとする3横綱は勿論、大関復帰を目指す琴奨菊関、そしてご当所での場所となる豪栄道関の奮起に期待がかかります。今場所活躍した高安関や御嶽海関、カド番の大関・照ノ富士関にも注目です。また、十両で大勝ちした大栄翔関と宇良関も、勝星を重ねて上位と対戦する機会があるかもしれません。

大相撲はシビアな番付社会。怪我なく1年を戦うことは非常に難しいことです。ですから、個人的には、年6場所は少し多すぎる気がします。一方、2カ月毎に大相撲を見ることができるのは大きな楽しみでもあります。来場所も多くの力士が15日間土俵に立ち続けてほしいです。そして、千秋楽まで優勝の行方が分からない白熱した展開に期待したいですね。

明治神宮で横綱土俵入りを行った稀勢の里関(写真は本ブログの読者様提供)。