等々力での選手権は2試合とも劇的な展開に!!(その1) | Purely Belter

等々力での選手権は2試合とも劇的な展開に!!(その1)

皆さま、明けましておめでとうございます。2018年も日本サッカーにとって素晴らしい年になりますように…。このブログでも、できるだけ多くのカテゴリーのサッカーを取り上げることができれば、と思っています。

 

さて、第96回全国高校サッカー選手権大会は今日が2回戦。関東の8会場で16試合が行われました。等々力陸上競技場では、桐蔭学園高等学校サッカー部(神奈川県代表)vs奈良市立一条高等学校サッカー部(奈良県代表)、富山第一高等学校サッカー部(富山県代表)vs東福岡高等学校サッカー部(福岡県代表)の2試合が行われました。

 

 

■苦難の末掴み取った14年ぶりの選手権

元日本代表DF森岡隆三氏やMF戸田和幸氏、さらには俳優で小説家の水島ヒロさんなど蒼々たるメンバーを輩出してきた桐蔭学園。嘗ては全国屈指の強豪校でしたが、これが14年ぶりの選手権です。

 

実は、桐蔭学園が選手権に出場するに当たって大きな苦難がありました。夏の神奈川県高校総合体育大会では2次予選3回戦で敗退。李国秀監督の方針で、選手権予選は1・2年生チームで戦う予定でした。しかし、保護者やOBの協力もあり、蓮見理志監督代行の下3年生主体チームで出場。決勝で桐光学園高等学校サッカー部をPK戦の末下し、見事14年ぶりの選手権出場を決めたのでした(詳細は、ゲキサカ「大黒柱退場の苦しい展開も、逆境乗り越えた桐蔭学園が涙の神奈川制覇!」を参照)。

 

桐蔭学園のAチームは今季、高円宮杯 神奈川県U-18サッカーリーグ1部(K1)を戦いましたが、18戦全敗で最下位。得失点差-79という記録的敗北で2部(K2)降格となりました。しかし、選手権に出場するチームは、Bチームとして3部(K3)に所属。Bグループで10チーム中2位に終わったため、惜しくもK2昇格はなりませんでしたが、7勝2分と無敗でリーグ戦を戦い終えました。

 

この試合に臨む桐蔭学園のスタメンは以下の通り。GKは寺澤悠大、DFは内田脩平、吉田剛、ネルソン拓、嶽間澤佳祐。MFは目黒雄大、金子大樹、宍戸晃瑶、若林龍。FWは平田一真と森山翔介の2トップとなりました。目黒選手と森山選手は桐蔭学園中学校サッカー部出身。中学3年時に出場した第45回全国中学校サッカー大会(2014年)ではベスト4に入っています。

 

■全国大会の常連となった一条は昨年のベスト16超えを目指す

一条は2年連続8回目の選手権。昨年の選手権はベスト16に進出。3回戦で佐野日本大学高等学校サッカー部(栃木県代表)にPK戦の末敗れましたが、その戦いぶりは全国にインパクトを残しました。

 

今年の一条は奈良県内で強さを見せつけました。全国高等学校総合体育大会サッカー競技予選で優勝し、インターハイに出場。高円宮杯U-18サッカーリーグ NFAリーグ1部でも無敗優勝を達成しました。選手権予選は危なげない戦いで決勝進出。決勝ではライバルの奈良育英高等学校サッカー部をPK戦の末下し、見事2大会連続の選手権出場を決めました。

 

この試合の一条のスタメンは以下の通り。GKは古川裕、DFは猪股智也、生成光、酒本哲太、山原琢夢。MFは中井一尭、川﨑航太、石川航大、松田崚。FWは相坂恭杜と竹島玲太の2トップとなりました。川﨑選手は、昨年の選手権でもレギュラーを務めていた選手。これが最後の選手権となります。

 

■桐蔭学園が常に先手を奪うも…ロスタイムにドラマ

試合は立ち上がりから桐蔭学園が押し込みます。多くの選手が絡んだパス交換や、若林選手と森山選手を中心とした個人技で、一条の守備陣を脅かしました。試合が動いたのは13分、森山選手がシュートを決め桐蔭学園が幸先よく先制しました。

 

その後も危なげなく試合を進めた桐蔭学園。しかし、後半3分に思わぬ形で試合は振り出しに戻ります。右サイドでの中井選手が中へ送ると、ボールはGK寺澤選手の頭上を越えてゴールへ。2002年W杯欧州予選プレーオフでのスロヴェニア代表MFミラン・オステルツを彷彿とさせるゴール。狙ったかどうかは定かではありませんが、素晴らしい一撃でした。

 

後半立ち上がりのゴールで勢いがついた一条でしたが、その後は再び桐蔭学園がペースを握ります。15分には若林選手がゴール前でボールを受ける場面がありましたし、24分には縦へのパスを受けた森山選手にシュートシーンがありました。そして、31分に待望の追加点を奪います。途中出場のMF瀬賀凛太郎選手が右からクロスを入れると、森山選手がヘッドで合わせ桐蔭学園が再びリードを奪いました。

 

終盤にリードを許した一条は、CBの酒本選手を前線に上げてパワープレー。しかし、攻撃の精度を欠き時間だけが過ぎます。38分には途中出場の藤武駆選手の右からのクロスに松田選手が合わせるも、シュートは力なくGK正面となりました。また、40分にはコーナーキックを得るも、川﨑選手のボールは直接ゴールを割ってしまいました。勿体無いシーンが続き敗戦濃厚と思われた後半ロスタイム、劇的なゴールが生まれます。石川選手が右からクロスを上げると、酒本選手が頭で繋ぎ、最後は相坂選手がヘディングでゴール。一条が土壇場で2-2の同点に追いつきました。

 

勝負の行方はペナルティーマークからのキック(所謂「PK戦」)へ。両チーム2人ずつが外して4人目を迎えると、先攻の桐蔭学園はネルソン拓選手が失敗。一方の一条は途中出場のDF奥井瑞樹選手がしっかりと決めました。一条は続く5人目・川﨑選手も成功。手に汗握る一戦は、一条がPK戦を制して3回戦進出を決めました。

 

■惜しくも勝利を逃した桐蔭学園…今後のサッカー人生で幸あれ!!

試合を押し気味に進めた桐蔭学園。3回戦進出が目前まで迫っていましたが、まさかの敗退となってしまいました。しかし、選手たちの技術は高く、多彩な攻撃を見せました。最後の精度を欠き追加点を奪うチャンスを逃したことが重く圧し掛かる結果となりましたが、胸を張ってほしいです。

 

私は部外者であるため詳細を述べることは避けますが、週刊誌の報道や内部関係者のネット上での書き込みを見る限り、この選手権に臨んだ3年生はとても苦しい部活生活を送っていたようです。リーグ戦では李監督がスカウトした1・2年生が起用され、3年生はBチームとして3部リーグでの戦いを強いられていました。練習に参加できない時期も長くあったそうです。

 

上記の通り、この選手権は、蓮見監督代行の下で3年生20名と2年生3名の計23名で臨みました。チームは分裂状態となっており、県予選の決勝にも1・2年生の姿はなかったと聞きます。色々と事情があるのでしょうが、とても残念なことです。そのような中、3年生主体の"Bチーム"は素晴らしいパフォーマンスを見せました。残念ながら敗退となってしまいましたが、しっかりとインパクトを残したと思います。

 

3年生にとって不本意な3年間だったでしょうが、サッカー人生はまだまだ続くはず。次のステップでは思う存分ピッチ上で暴れてほしいですね。また、2年生の3名ですが、今後新チームに合流するかは不透明とのこと。すでに李監督の下で新体制はスタートしているそうですが、選手権に出場した3名が来年も全国の舞台に出場する機会が与えられてほしいです。

 

■激戦をモノにした一条は過去最高のベスト8入りを目指す

苦しい時間が続いた一条でしたが、少ないチャンスをモノにして3回戦進出を決めました。2失点目を観て、さすがに勝てないだろうと思っていましたが、見事な粘りでした。これで昨年に続くベスト16入りとなりました。

 

立ち上がりは、桐蔭学園に翻弄され、なかなか前へボールを送ることができずにいました。ボールを奪っても判断が遅くなり、桐蔭学園の選手に潰されてチャンスを作れませんでした。しかし、時間の経過とともに、徐々にボールを持てるようになり、相手陣内でプレーすることができるようになりました。川﨑選手や相坂選手など、足元の技術が高い選手がおり、彼らを基点とすることができました。

 

一条は明日、米子北高等学校サッカー部(鳥取県代表)と3回戦を戦います。米子北はプレミアリーグWESTで見事残留を勝ち取り、この選手権でも1回戦から難敵を斥けて勝ち進んでいます。難しい試合になりそうですが、何が起こるかわからないのがサッカー。この試合で見せたような粘り強さを披露してほしいですね。

 

悔しさをバネに選手権に出場した桐蔭学園。惜しくも3回戦進出はならなかった。