くも膜下出血にならない脳動脈瘤 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

以前にいただいたリクエストにこたえたいと思います。


それは、

「脳動脈瘤が破裂してもくも膜下出血にならない場合があると聞きましたが、どういうことでしょう?」


というような内容でした。


これにお答えします。


動脈瘤が破裂してくも膜下出血となるのは何故かといいますと、

それは多くの動脈瘤の位置が”くも膜”に覆われた”くも膜下”のスペースにあるからです。


動脈瘤が破裂したからといって、

その場所がくも膜下でなければ、当然くも膜下出血にはなりません。


出血の場所は出血点によるからです。


つまり、

動脈瘤の出血点がどういった位置にあるかによって、

何出血になるかが変わるのです。


首を貫いた頚動脈と椎骨動脈が頭蓋内に入り、

前、中、後の大脳動脈と、あとは前、後の交通動脈や小脳の動脈などに分岐します。


脳を栄養するこれらの動脈へ分岐した後にできる動脈瘤は、

どれもだいたいくも膜下出血を起こします。


しかし、考えてみてください、

もし頭蓋内に入る前の動脈瘤であればどうでしょう?


当たり前ですが、その場合にはくも膜下出血にはなりません。


そもそもくも膜下という以前に、頭蓋内にすら入っていない場所なのだから、

当然ですよね。


内頚動脈という血管を見てみると、

首を貫いて頭蓋内に入った後、しばらく海綿静脈洞という、静脈のプールのような場所を通ります。


そして、その後にくも膜下のスペースに入るのです。


時折、

この海綿静脈洞を通っている部分に動脈瘤ができることがあります。


この場合、破裂してもやはりくも膜下出血にはなりません。


その代り、破裂した動脈の出血がそのまま静脈洞に流れ込むことになります。


これを内頚動脈海綿静脈洞ろうと呼んでいます。


この静脈のプールには眼球運動を司る神経や、

顔の感覚をつかさどる三叉神経などが通っていますので、


場合によってはこれらの神経がダメージを受けることもあります。


また、静脈が逆流して目が腫れたりもします。


これらの症状が出るものの、それでもまだくも膜下出血に比べたら、

やはりマシでしょう。


くも膜下出血は場合によっては死に至ることもあるものですから。


今度は、たとえば、

動脈瘤が内頚動脈からその先の中大脳動脈や前大脳動脈にできたとして、


普通のくも膜下のスペースではなく、

動脈瘤が脳につっこむような形だったらどうでしょうか?


この場合は、脳に向かって出血が噴き出すので、

脳内出血となることが多いです。


さらに、

もっともっと末梢の動脈に動脈瘤ができたらどうでしょう?


たとえば、脳の表面から、くも膜を押し上げるような形で動脈瘤ができていたら。


その場合は出血の方向によっては、

くも膜の外に出血が出て、硬膜下出血となる場合もあります。


つまり、動脈瘤のできた位置と、出血の方向によって、

くも膜下出血だけでなく、

様々な出血になりうるということなんですね。


これで、ご質問への答えといたしますが、

いかがでしょうか?

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