「タダ」より怖いものはない | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

「タダ」と聞けば嬉しい気持ちにさせられるところがある。
アメリカからやって来た英会話講師の一人が、
日本に来て驚いたのは、”タダ”でティッシュ配りをしている事だったという。
アメリカでは、あの種のティッシュは決して安くはない。
そんなものを惜しげもなく次々にタダで配っているのを見て、
はじめの頃はウソだろうと思ったが、本当にタダと知ると、
通るたびにもらったと言っていた。
アメリカ流のフリーの表現は、"Buy one, get one free(一つ買うと一つおマケ)"
という方法をとる事が多い。
「二つを半額で提供する」ことによって「日銭を稼ぐ」という売り上げのプロモーション。
決して完全なタダはないという。

フランス語で、タダというのは、"Gratuit(グラチュイ)"という表現をする。
学割や味見などでタダのものはあるため"Gratuit"という言葉を聞くと、
つい嬉しくなってしまうところがある。
20世紀のフランスの作家『狭き門』などで知られるアンドレ・ジッドの作品に、
『法王庁の抜け穴』という小説がある。
本当の法王は、囚われて別の場所にいるという話をでっち上げて、
支援金をだまし取るということに端を発する怪しい人物たちの行動を描いたもの。
ラフカディオという青年を中心とする話。
これは、20世紀的な問題を提起した意欲作と言える。
この小説の中で出てくるのは"Acte Gratuit" というもの。
読めばその如く「タダの行動」となるから日本語にする時は、
「無償の行動」と訳されるが、この表現は正確ではない。
正しい解釈をすれば、「理性を通さない無意味な衝動的な行動」という意味となる。
ラフカディオという青年が、列車に乗り合わせた人物を突き落として殺害してしまう。
こういった行動を指す言葉で、
これを小説に挙げる事で20世紀の文学を大きく変えることになる。
この小説が発表されるや、問題とされ、
アンドレ・ジッド自身は「こんな行動はありえない」と釈明したが、
現代社会の中では、明らかに起こっていること。
ここしばらくのニュースにも何の縁もゆかりもない人に対する
「理性のない衝動的な凶悪犯罪」が起こっている。

"Acte Gratuit"は、今日的な問題として擡頭しつつあるようだ。

こんな「タダ」は、まっぴら御免蒙りたい。

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<了>