「行く雲を 寝ていて見るや 夏座敷」 | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

「帰りの船が沖縄に近づいたとき、ああ、またあの水蒸気の国に帰るのか、と思いました」
この言葉を語ったのは、画家の三岸節子。
戦後フランスに渡り、しばらくぶりに日本に帰って来た時に、当時、
福田定一という本名で産經新聞の美術記者をしていた司馬遼太郎に語った言葉がこれ。
マルセイユの港を出て、三週間ほどかけて沖縄辺りまで来ると、
空気そのものが水蒸気に溢れていた、ということらしい。

当方は、ここ5、6年、毎年7月頃にフランスに行き、
帰ってくる時に迎えてくれる日本の空気は、
この言葉のように、まさに水蒸気に溢れている。
帰国便から降り、空港に降り立つとすぐ、三岸の言葉を思い起こさせられる。
日本の夏は湿気を含むため暑さがさらに増幅しているように思える。
『徒然草』五十五段に「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる」
と出てくる。
家の造りは、夏をいかに過ごすかを考えて作るのがいい。
冬は、どのようにしても過ごすことはできるが、夏の暑さを避けるのは大変。
日本の家屋は、夏に熱気がこもらないよう風通しを考えて作られていた。
今は、マンション建築が主流。
風通しはあまり考えられていない。
というのも窓を開けると騒音、汚れた外気、おまけに物騒でもあるところから、
閉め切ってエアコンのお世話になる構造になっているとも言える。

蕉門十哲の一人、「軽み」の俳風では随一ともいわれた 志太野坡(しだのやば)の句に
「行く雲を 寝ていて見るや 夏座敷」というのがある。
障子などを開け放って座敷にごろんと寝転んで、涼やかな風に吹かれ、
流れていく雲を見ている、といった風情を詠んだもの。

今は、そんな風情より、エアコンの冷気が対流し除湿している部屋で、
ソファの上に寝転んでいる方が心地いい、といったところだろうか。

水蒸気を忌み嫌うのは三岸節子ばかりではなさそうだ。


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<了>