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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/22(日)第86回日本音楽コンクール本選会《バイオリン部門》優勝は大関万結、2位は外村理紗/躍動する新世代

2017年10月22日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第86回 日本音楽コンクール 本選会《バイオリン部門》
THE 86th MUSIC COMPETITION OF JAPAN "VIOLIN"


2017年10月22日(日)16:00~ 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 3列(1列目)18番 3,500円
指 揮:田中祐子
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

 「第86回日本音楽コンクール本選会」の《バイオリン部門》を聴く。昨年に引き続き、今年もバイオリン部門の本選会だけは聴き逃すまいとして、何とかスケジュールをヤリクリしておいた。そういうわけなので、実は第3まである予選会を通過して本選出場を果たした4名が誰だったのかも知らない状態で、今朝起きてからインターネットで調べたという次第。
 例年のことだが、「日本音楽コンクール」では本選会といいつつも当日の審査のみで成績が決まるわけではなく、第3予選の審査結果の得点の一部と本選会の得点の合算で最終的な成績が決まる。従って、本選会を聴いただけでの成績評価は、最終結果と感覚的に一致しないこともあり得る。そのことも踏まえて、本日の《バイオリン部門》の本選会の様子を演奏順にレビューしてみよう。

●岸本萌乃加(きしもとほのか/1994年生まれ/東京藝術大学大学院修士課程在学中)
【曲目】シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
 岸本さんは4名の中でも最年長で、コンクール歴の長いし、演奏活動も行っているので、あちこちで名前を見かける。顔も名前も知られた存在である。そういうレベルの人であるから、演奏自体も極めて安定していた。ただし、第1奏者というのはコンクールにおいては色々な意味でやはり不利になる。本人の緊張度合いも強いだろうし、オーケストラ側もいきなり本調子というわけにもいかないだろう。そのような中で、岸本さんの演奏は端正で、すべての音符を正確に弾いているという印象だった。カデンツァなどの速い技巧的なパッセージなども丁寧に、ひとひとつの音がはっきりと正確に聞こえて来る。逆の見方をすると、やや平板な感じがしてメリハリが少ないようにも思えた。協奏曲ということもあるし、コンクールなのであるから、ちょっと気負っているのが、大きな音を出そうとしている(力んでいるという意味ではない)。そのためにダイナミックレンジが狭くなり、強音の方に全体がシフトしていたのではないだろうか。結果、力感は十分にあるが、音楽的にやや固いという印象になっていたようだ。

●飯守朝子(いいもりあさこ/1995年生まれ/東京藝術大学4年在学中)
【曲目】シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
 同じ曲が続くと、どうしても直接的な比較をすることになってしまう。飯守さんの演奏では、まず音色が豊潤な印象が強かった。音に厚みがあり、しっとりと艶やかで質感が高い。楽器が良いのかもしれないが、どうもそれだけではなさそう。弱音が美しく、ダイナミックレンジが広い。そうなると表現にも幅が出てくるようで、楽曲の解釈というか、細かな点まで心配りがされている丁寧な音楽作りになっている。飯守さんの演奏のもう一つの特徴は、旋律がよく歌っているということ。ひとつひとつの小さなフレーズから大きな主題まで、すべてが撓うようなふくらみがあり、しなやかに歌っているのだ。そしてフレーズ間の流れも非常にスムーズで、音楽にしなやかな流れが感じられた。押し出しはあまり強くはないが、テンポを少し揺らして歌うようなフレージングのヴァイオリンは、私の好きなタイプである。

●外村理紗(ほかむらりさ/2001年生まれ/東京音楽大学付属高等学校1年在学中)
【曲目】チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 外村さんは4名の中でも最年少。何と21世紀の生まれで高校1年生。曲目も本日唯一のチャイコフスキーということで、他の3名とは直接比較はされないで済みそうだ。演奏はやはり若さがいっぱいで、物怖じしないで割と自由度の高い演奏をしている。技巧的にもかなりのレベルに到達していて、音程も正確、ダイナミックレンジも広く、表現力の発揮度が高い。音量も十分に出ていて、なかなか押し出しの強い演奏をする。16歳でこれだけの演奏をされたら、何もいうことはないだろう。今の時点では満点をあげても良いと思う。会場からもBravo!!が飛んでいた。客観的に見て素晴らしい出来映えだと言って構わないだろうと思うが、外村さんのヴァイオリンの音色はちょっと鋭角的で、研ぎ澄まされ過ぎて豊かさが足りない印象で、個人的にはちょっと苦手なタイプなのである。あるいは楽器による違いなのかもしれない。これは完全に好みの問題なので、演奏の評価以前のことなのではあるが、私としては気になってしまうので・・・・。

●大関万結(おおぜきまゆ/2000年生まれ/桐朋女子高等学校音楽科3年在学中)
【曲目】シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
 大関さんは高校3年生。それにしては大人っぽい演奏というか、完成度が高い演奏というイメージなのである。ご本人はあまり大人っぽくは見えない(失礼)。実際には、演奏中に2〜3回ミスがあったりもしたのだが、そんなことがまったく気にならないほどの完成度を感じたのである。つまりは彼女の持つ音楽性ということ。楽曲に対する造型的な捉え方がシッカリしていて、ソリストとしてオーケストラをリードしていくだけのテンポ感やフレージング、旋律の歌わせ方を持っている。身体の使い方もうまい。カデンツァなどは堂々たる一人舞台を創り上げているし、オーケトラとのやり取りでも常に自分なりの音楽を作ってリードしていく感じ。緩徐楽章などのゆったりとしたテンポの採り方と歌わせ方など、圧巻とも言える素晴らしさだ。音楽の流れに乗るのではなくて、流れを創り出していくという強い意志が感じられ、シベリウスの持つ冷たさと熱さを表現し分ける力もある。音色も良い。繊細な弱音から力感を込めた低音部、中高音域の艶やかで豊かな音。まあ、強いて難をいうなら、もう少し音量があれば、ということくらいである。


 さて、今回は直前まで本選出場者が誰だかさえ知らない状態だったので、あえて審査結果の予測などはしなかったが、まあ、聴いていれば何となく感じるものはある。今回の《バイオリン部門》には109名の応募があり棄権5名を除く104名が実際に参加した。第1予選通過者は31名。その中から第2予選通過者は13名だった。そして第3予選を通過して本選会に進んだのは4名である。にもかかわらず、正直に言うと、その4名ですら実力に開きがあるように感じられた。このコンクールでは、第3予選から本選会までの間におよそ1ヶ月間の時間を設けている。そのために、本選会出場者には、いろいろな意味で準備する時間が十分にあるはず。良い楽器を借りたりするというような話も聞くし、大学院生・大学生・高校生では練習時間の配分なども変わってくるだろうし、公的な演奏活動をしている人はリハーサルや本番演奏会に臨む時間も大切にしなければならない。それぞれの立場によっても、1ヶ月間の対応にも差が出てくることも考えられるのである。そしてその差は、意外に大きく感じられた。

 さて、最終的な選考結果は以下の通りとなった。

【第86回 日本音楽コンクール《バイオリン部門》最終選考結果】
  ●第1位・・・・大関万結
  ●第2位・・・・外村理紗
  ●第3位・・・・岸本萌乃加
  ●入 選・・・・飯守朝子
   ※岩谷賞・・・・大関万結

 私としては、あくまで本選会を聴いただけの、それもほとんど初めて聴く人の印象だけしか判断材料がないのだが、最終結果とはいささか異なる順位を想定していた。まあ、その中身については言わぬが花ということだろう。ただし、第1位が大関さんであることは確信していたし、聴衆賞も大関さんに投票したので、私の耳も大体世間並みということなのだろう。
 4名の演奏が終了して後、30分ほどで先行結果の発表があったのだが、今年は意外に早く結果発表がされたように感じた。審査員の先生方の採点や、聴衆賞の開票にも時間がかからなかったということは、まあ、多くの人たちの予想通りにことが運んだと言うことなのであろう。そういう意味では、誰もが納得のいく結果であったようだ。


 さて、昨年に引き続き、今年も1位・2位を高校生が獲得した。若年化が進んでいるというよりは、より若い世代への教育プログラムや環境が充実してきたことと、またその世代に優秀な人材が育ってきたということなもなる。21世紀生まれのファイナリストが登場したのに驚きを隠せなかった。一部のウワサでは、来年あたりは中学生が出てくるかも・・・・とか。いずれにしても、若い世代の活躍は、未来を明るく照らしてくれているようで、嬉しい。

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