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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

2/16(木)仲道郁代・幸田浩子・川久保賜紀/女神たちが贈る素敵なコンサートは美しい音楽の饗宴

2017年02月16日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
2/16(木)仲道郁代・幸田浩子・川久保賜紀/女神たちが贈る素敵なコンサートは美しい音楽の饗宴

公共ホールネットワーク事業 2017
女神たちが贈る素敵なコンサート

2017年2月16日(木)19:00〜 川口リリア・音楽ホール 指定席 A列 9番 3,800円
ピアノ:仲道郁代♡
ソプラノ:幸田浩子♦
ヴァイオリン:川久保賜紀♥
【曲目】
グノー:歌劇『ロミオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」♦♡
リスト:愛の夢 第3番 S.298「おお、愛しうる限り愛せ」♦♡
クライスラー:愛の悲しみ♥♡
クライスラー:愛の喜び♥♡
ショパン:「12の練習曲 作品10」より第12番 ハ短調「革命」♡
ショパン:「12の練習曲 作品10」より第3番 ホ長調「別れの曲」♡
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53「英雄」♡
シューマン:アベッグ変奏曲 作品1♡
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲♥♡
クライスラー:シンコペーション♥♡
サラサーテ:アンダルシアのロマンス♥♡
J.シュトラウスⅡ:喜歌劇『こうもり』より「侯爵様、あなたのようなお方は」♦♡
レハール:喜歌劇『メリー・ウィドウ』より「ヴィリアの歌」♦♡
ジーツィンスキー:ウィーン、わが夢の街♦♡
《アンコール》
 スティーブンソン/加藤昌則 編:庭の千草♥♦♡
 バッハ/グノー/藤満 健 編:アヴェ・マリア♥♦♡

 久し振りに川口リリアホールにやって来た。この前に来た時はまだブログを書いていなかった頃なので、もう10年以上前になるかもしれない。JR川口駅のホームから見えるところにあり、西口を出て左手の方、徒歩1分。来てみるとかつてのことを思い出し、4階へ上るエスカレーターの記憶が戻って来る。川口リリアホールには、2002席・多目的の「メインホール」と600席の「音楽ホール」がある。今日のコンサートは「音楽ホール」で開催された。600席という規模は、日経ホールや浜離宮朝日ホールもあるいは東京文化会館・小ホールと同じくらいのコンパクトなサイズだが、1フロアの客席は後方に行くに従って階段状にせり上がっていくため、全体の天上が高く、自然で豊かな残響の音の良いホールだ。この規模でパイプオルガンが設置されている。

 さて今日のコンサートは、「公共ホールネットワーク事業」などという何ともお役所的なネーミングなのが笑いを誘ってしまうが(失礼)、同じ内容のコンサートを2月20日に岩手県奥州市でも開催するらしい。地方都市においてもトップクラスのアーティストのコンサートが開かれるのは歓迎すべきことではあるが、東京から電車で30分の川口市で行うのにはいささかローカル色が強すぎ、のような気もする。

 実際にはそれほど遠くはない川口リリアホールまで足を伸ばしたのは、川久保賜紀さん、幸田浩子さん、そして仲道郁代さんといういつも聴いているお馴染みのアーテイストが珍しい組み合わせによるコラボレーションの企画になっているからだ。実際には、ヴァイオリンとソプラノとピアノのための楽曲が、ない。だからプログラムを見れば分かるように、ヴァイオリン曲とピアノ伴奏、ソプラノ曲とピアノ伴奏、ピアノのソロ演奏を組み合わせることになる。3名がセッションするためには、それ用に編曲するしかないのである。

 まず初めは、幸田さんの歌唱を仲道さんが伴奏する。1曲目はグノーの「私は夢に生きたい」。いつも変わらないことだが、幸田さんの声は若い、というか娘役によく合った声質で、嫌味がなく、とても健やかなイメージである。コロラトゥーラ系の歌唱技術もレベルが高いし、高音域も無理なく出せるので、この手の曲はピッタリだ。

 次の曲に進む前にトークを挟み、お二人で曲の解説などを行った。2曲目はリストの歌曲「おお、愛しうる限り愛せ」。有名なピアノ曲「愛の夢 第3番」はこの曲を編曲したものだが、元の歌曲を聴く機会は意外に少ない。ピアノの分散和音(ピアノ版とは微妙に違っている)に乗せて、お馴染みの旋律が登場する。歌詞はドイツ語。幸田さんはドイツ語の歌唱も心得たもので、発音もキレイだし聴き取りやすい。

 続いて賜紀さんが登場して仲道さんのピアノでヴァイオリンの名曲を。クライスラーの「愛の悲しみ」は、儚なさを漂わせる憂いを帯びた音色で、賜紀さんのヴァイオリンが歌う。ここで描かれる「悲しみ」は絶望的な悲しみではなく、喜びの中のちょっとした翳りという程度。艶やかで流麗なレガートには気品が漂う。

 そして「愛の喜び」。もちろんコチラの方が華やかで明るい。粋で洒脱なクライスラーの本領発揮で、ワルツの調べも優雅に踊る。賜紀さんの流れるようなリズム感と美しいレガート、気の向くまま自由に踊るようなテンポの変化が非常に大らかで、まさに踊るように旋律が歌う。愛の喜び・幸せいっぱい、という明るい雰囲気が随所に現れているようであった。仲道さんのピアノも軽快で優雅だ。

 続いては仲道さんのソロでショパンの名曲たち。「革命のエチュード」と呼ばれる作品10-12の練習曲は、それまでの伴奏とは違って、音量が倍くらいに跳ね上がり、幅広いダイナミックレンジの中で表現は豊かだ。激しく力強いパッセージも仲道さんの演奏はどことなく「しっとり系」だ。左手の無窮動的な動きに右手の叩き付けるような主題が重ねられていくが、音に角がなくマイルドなためだろうか、決して無機質なイメージにはならない。「強さ」よりも「優しさ」が勝っている風に聞こえる。

 続いては同じ作品10の練習曲集より第3番の「別れの曲」。敢えてかなり遅めのテンポを採り、その中でフレーズに寄り添うようなテンポが揺れている。この微妙な表現力も、決して意図的な感じがせず、自然体なところがとても素敵だ。ショパンの前にあって、感情の趣くままに自由に振る舞うといった感じ。

 前半の最後を締めくくるのは、「英雄ポロネーズ」。重低音の響きがホールに満ちてしまい、ゴーッという音の奔流にようになってしまうところがあり(もっとも誰が弾いてもそうなるわけだが)、CDなどの録音を聴くのとホールでのナマ演奏の聞こえ方の違いを実感してしまう。躍動的に弾むポロネーズのリズムが、濁って音のせいでスッキリしないところが惜しく感じた。中間部などは高音域は繊細にして華麗なショパンらしい抒情性を湛えていて素敵だった。

 後半は、ピアノの譜面台を外したまま、仲道さんのソロから。シューマンの「アベッグ変奏曲」は作品番号1が示す通りの初期作品だが、「アベッグABEGG」という名称が《ラ-シ♭-ミ-ソ-ソ》主題の音型をなしているが、実在するシューマンの愛した女性(ただし不倫だった)の名だったとか、諸説あるらしい。この主題はいかにも「これぞロマン派」といったシューマンらしさでとても美しい。どう聴いても愛しい女性を表している主題だが、変奏が進むと一筋縄では行かない恋の道(不倫だから?)のごとく、複雑に展開していく。仲道さんの演奏はここでも「しっとり系」で、ことさらロマンティックな情感を浮き彫りにしていくようであった。

 ここで再び賜紀さんが登場して、ヴァイオリンの曲となる。まず、バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」。このような地方型のコンサートではあまり聴く機会のない曲なのかもしれないが、私などは何回聴いたか分からないくらいで、曲もすっかり覚えてしまっている。賜紀さんの演奏は、今日はいつもよりは伸び伸びとしていたような気がする。仲道さんのピアノとの相性も良いのだろう。旋律は豊かに歌い、音色はいつもより太く艶やかだ。テンポの変化や、強弱の差を極端にしても仲道さんはピタリと寄り添って合わせてくれる。だからいつもよりはちょっと大胆に振る舞っているのに、肩の力が抜けていた。素晴らしい演奏だったと思う。

 続いてはクライスラーの「シンコペーション」。こちらはラグ・タイムのような軽妙な曲相で、もはやクラシック音楽の領域からも離れつつある曲だ。クライスラーが多彩な楽曲を残しているのに対して、賜紀さんの演奏も多彩さを見せる。先ほどの「愛の喜び」のような古き良きウィーンのようなゴージャスで洒落ている演奏に対して、ここでは軽くステップを踏むような、気さくで楽しげ、ちょっとふざけた感じに変わる。聴いていてもつい笑みがこぼれてしまう。アメリカ育ちの賜紀さんには、こういう一面もあるのだ。

 次もお馴染みの曲だが、サラサーテの「アンダルシアのロマンス」。今日の賜紀さんは本当に伸び伸びとしている。スペインの暑苦しい夏の夜、愛し合う二人を取り巻く空気感・・・・といった感じの曲なのだが、今日はその暑苦しさがあまり感じられずに、スッキリと陽性で明るいイメージ。何と晴れやかなロマンスなのだろう。

 ここからは再度、幸田さんが登場し、ウィンナ・オペレッタの世界へ。まずはヨハン・シュトラウス二世の『こうもり』からアデーレのアリア「侯爵様、あなたのようなお方は」。明るく無邪気な庶民パワーは貴族社会に大胆に切り込んで行く。幸田さんはウィーン・フォルクスオーパーの専属だったこともあるくらいだから、ウィーン風のドイツ語もとてもキレイで、軽妙なコロラトゥーラがよく回り、お侠なアデーレの舞台姿が目に浮かぶようであった。

 続いてレハールの『メリー・ウィドウ』から「ヴィリアの歌」。こちらの方はちょっと大人の雰囲気の曲。幸田さんがハンナの役を演じたら、清楚で上品な感じになるだろう。ちょっと細めのキレイな声で、高音域もとても美しかった。

 プログラムの最後は、これもお馴染み、ジーツィンスキーの「ウィーン、わが夢の街」。幸田さんの歌うのを何度聴いたことか。今日は幸田さんも本当に気持ちよさそうに伸び伸びと歌っていた。古き良き時代の感傷的なロマンティシズム。ウィーンか・・・私も一度行ってみたい。

 アンコールは、ソプラノとヴァイオリンとピアノがセッションできるようにと、特別に用意された編曲で、アイルランド民謡の「庭の千草」。原題は「The Last Rose of Summer」で「夏の名残のバラ」として知られている。あまりにも有名な民謡なので、古今東西に様々な編曲があるが、ヴァイオリンの世界ではエルンスト作曲の無伴奏ヴァイオリンのための「夏の名残のバラ」が超絶技巧曲として有名だ。今日は加藤昌則さんの編曲でヴァイオリン・パートは抒情的で優しい。歌唱は英語である。確かにソプラノとヴァイオリンとピアノというのは珍しい組み合わせで、私も初めて聴いた。
 アンコールの2曲目は、バッハ/グノーの「アヴェ・マリア」を藤満 健さんの編曲で。幸田さんの清冽な「アヴェ・マリア」に賜紀さんの上品なヴァイオリンが寄り添う。素敵なアンコールであった。

 今日は地方型のコラボレーションによるコンサートで、それ故に完全な名曲ものであったから、全部よく知っている曲。新鮮味はないが、安心して聴ける。心穏やかにコンサートを楽しむ・・・というのがコンセプトだろうから、素直に楽しむことができた。
 終演後は恒例のサイン会があった。3名がテーブルに横に並ぶと記者会見のようになって面白い。ただし今日は写真はNGだった。3名とも人気者なので、けっこう長い列が出来ていた。とくに仲道さんはCDをたくさん出されているので、多くのファンが並んでいたようだ。私はといえば、賜紀さんと幸田さんのCDは全部サイン入りで持っているので、昨年2016年11月11日、文京シビックホールでの「夜クラシック」コンサートの時の賜紀さんの写真にサインしていただいた。
 この後、2月20日の日曜日に、岩手県・奥州市で今日と同じ「女神たちが贈る素敵なコンサート」が開催される予定。もう一度聴きたいけど、さすがに岩手県まで追っかけていくのは・・・・ムリですね。



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