Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/14(土)東京フィル/響きの森/南紫音・佐藤しのぶ・錦織健ら多彩なゲストと尾高忠明の楽しいニューイヤー

2017年01月14日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 響きの森クラシック・シリーズ Vol.58
ニューイヤー・コンサート 2017


2017年1月14日(土)15:00〜 文京シビックホール A席 1階 2列 23番 6,900円(セット券割引)
指 揮:尾高忠明
ヴァイオリン:南 紫音*
ソプラノ:佐藤しのぶ**
テノール:錦織 健***
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲
モーツァルト:ロンド ハ長調 K.373*
ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調 作品50*
J.シュトラウスⅡ:喜歌劇『こうもり』序曲
ドニゼッティ:歌劇『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」***
グノー:歌劇『ファウスト』より「宝石の歌」**
ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』より「空は微笑み」***
プッチーニ:歌劇『マノン・レスコー』間奏曲
プッチーニ:歌劇『蝶々夫人』より「ある晴れた日に」**
《アンコール》
 ヴェルディ:歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」** ***

 公益財団法人文京アカデミーと東京フィルハーモニー交響楽団の提携による共同主催の「響きの森クラシック・シリーズ」。年4回開催のこのシリーズ、1月開催は「ニューイヤー・コンサート」という扱いで、チケット価格は少々高めだったが、多彩なゲストを招いての楽しいコンサートになった。何より、指揮者の尾高忠明さんのお話しが軽妙・洒脱で、新旧各地の面白い体験談や業界ネタなどを面白おかしく語られて、お正月らしい肩の凝らないクラシック・コンサートとなった。
 東京フィルは、この時期、別働隊がニューヨークに行っていてカーネギーホールなどでコンサートを行っているとのこと。さすがは国内で最大規模の人数を擁するオーケストラだけあって、ニューヨークと東京で同時にコンサートを行ったりすることができるのである。

 前半はウィーン古典派の音楽。1曲目はモーツァルトの『フィガロの結婚』序曲。尾高さんは速めのテンポで軽快に飛ばしていくのに対して、日本で最もオペラ演奏になれている東京フィルだけに、我が意を得たりといわんばかりの軽めの音でワクワク感を演出する。実に手慣れた、粋な演奏であった。

 2曲目はモーツァルトの「ロンド ハ長調 K.373」。独奏ヴァイオリンとオーケストラのためのロンドである。ヴァイオリン独奏は、ゲストの南 紫音さん。ブルーのお衣装に身を包み、ウィーン社交界の名花といった風情で、お嬢様というよりはお姫様にような気品の漂う雰囲気である。演奏の方は、見た目の可憐な感じとはちょっと違って、少々エッジが立ったところがあり、キレ味の鋭い立ち上がりと、大らかに旋律を歌わせるしなやかさ、そして豊潤な響きを持っている。キリッとしているのに柔らかく、正確な技巧を駆使しての表現の幅も広く豊かだ。

 3曲目はベートーヴェンの「ロマンス 第2番 ヘ長調 作品50」。これは有名な曲なので誰でも知っているだろう。わざわざソリストを立ててオーケストラのコンサートで演奏することは意外に少なく、今日のような企画コンサートならではの聴き所だ。紫音さんのヴァイオリンで、尾高さんの指揮で、東京フィルの演奏というのは、かなり贅沢な設定である。尾高さんはこの曲をかなり遅めのテンポを採り、この美しく抒情的な名旋律を紫音さんにゆったりと情感いっぱいに歌わせていく。まるで歌曲のように、ヴァイオリンにも息遣いがあるような、歌うようなフレージングと細やかなニュアンスの彩り。紫音さんのクラスのヴァイオリニストをゲストで呼んで、小品2曲(合わせても15分くらい)ではもったいないではないかと思っていたのだが、この演奏を聴いて納得。協奏曲1曲分に相当する多くの要素がぎゅっと詰まった質の高い演奏だった。尾高さんが遅いテンポを採用した理由がよく分かる。このテンポだからこそ、これだけヴァイオリンが歌えるのだ。

 後半は一転してロマン派のオペラの音楽。
 1曲目はJ.シュトラウスⅡの「喜歌劇『こうもり』序曲」。お馴染みのウィンナ・ワルツやポルカが詰まった、楽しいオペレッタへと誘う曲。聴いているだけで期待感が高まり、ワクワクして、早く幕が上がらないかなァ、という気分にさせてくれる。東京フィルはこういった曲の演奏は抜群に上手い。尾高さんの手慣れた指揮に乗せられて、オーケストラ自体が踊り出したくなるような躍動感に満ちている。

 続いては、ドニゼッティの歌劇『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」。テノールの名アリアである。歌うのはもちろん、錦織 健さん。いつになっても変わらない美声である。高音域の安定した美しい歌唱は見事なもので、端正ながらもしっとりとした情感を込めて、聴く者を惹き付けるチカラがある。やはり錦織さんはスター歌手だと思う。押し出しは決して強くないのに、抜群の存在感を示している。
 最近はテニスの錦織 圭(にしこりけい)選手が大活躍しているが、名前の似ているお二人とも島根県の出身で、そちらには「錦織」姓が多いのだそうだ。漢字は同じでも呼び名は色々あって、「にしこおり」「にしこり」「にしごおり」「にしきおり」と様々。歌手の錦織さんは本当は「にしこおり」なのだが、東京に出て来てからは「にしきおり」と読まれることが多く、そのまま今では「にしきおりけん」のアーティスト名で通していると以前聞いたことがある。

 次はグノーの歌劇『ファウスト』より「宝石の歌」。こちらはコロラトゥーラ系のソプラノさんの定番アリア。佐藤しのぶさんの登場である。天性の美声と軽やかで無理なく出る高音域がとても美しい。尾高さんのやや遅めのテンポに乗せて、十分な声量でたっぷりとフレーズを歌わせながらの歌唱は貫禄さえ感じさせられる圧倒的な存在感である。佐藤さんもスター歌手のオーラがいっぱいだ。
 そういえば錦織さんも佐藤さんもNHKの紅白歌合戦に出演したことがある。お二人ともオペラ歌手としても世界レベルの一流だが、活動の幅が広いマルチ・タレントでもある。

 続いてはロッシーニの歌劇『セビリアの理髪師』より「空は微笑み」。錦織さんはギターを弾きながらの歌唱であった。オペラ歌手のギター弾き語りというのも珍しいかも。こんなところでも多芸ぶりを発揮する。ギターの演奏そのものは難しいことをしているわけではないが、ギターを弾きながらオペラのアリアを歌うというのは、けっこう難易度が高いのではないだろうか。さらに、コロラトゥーラの装飾がいっぱい付いた技巧的な歌唱もなかなか見事なものだった。

 ここで歌手のお二人にちょっとお休みいただくための管弦楽小品は、プッチーニの歌劇『マノン・レスコー』間奏曲。美しくも哀しいプッチーニ節。尾高さんは、これでもかとばかりに哀しげに旋律を歌わせ、分厚い和声で情感を盛り上げる。やり過ぎなくらいに抒情的な演奏。いかにもオペラ! 的なサービス精神旺盛な世界である。

 プログラムの最後は、プッチーニの歌劇『蝶々夫人』より「ある晴れた日に」。もちろん佐藤さん。コチラも典型的なプッチーニ節の名曲。哀しく切ないのに、憧れを残していて、熱い情感を込めてドラマティック。佐藤さんの歌唱は、豊かな声量と揺るぎない高音域、朗々たる歌唱。見事なものである。

 アンコールはお約束通り、ヴェルディの歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」。錦織さんのアルフレード、佐藤さんのヴィオレッタ、尾高さんの指揮、東京フィルの演奏。ニューイヤー・コンサートに相応しい豪華なフィナーレとなった。

 今日の「響きの森」シリーズは、いつもとはちょっと違った雰囲気の「ニューイヤー・コンサート」。曲目がかなり少なく感じられると思うが、これは、1曲ごとの曲間に尾高さんや出演者の方々とのトークがあったからだ。そしてそのトークが面白いこと。さりげなく楽曲の解説をしたり、思い出話に花を咲かせたり。ひとつひとつのお話しにはちゃんとオチが付いていて、笑わせてくれる。まあ、ニューイヤーなのでこういった楽しいコンサートも良いものだ。何だかんだと2時間たっぷり、楽しませていただいた。会場を後にする人たちの笑顔が印象に残るコンサートであった。

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