Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

4/27(水)3.11被災者のためのチャリティコンサート/村治佳織&奏一/川久保賜紀/天皇皇后両陛下もご来臨

2016年04月27日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
認定NPO法人 難民を助ける会 3.11被災者のためのチャリティコンサート

2016年4月27日(水)18:30~ 紀尾井ホール B席 2階 BR 1列 9番 4,000円
主催:難民を助ける会(AAR Japan)
共催:社会福祉法人 さぽうと21
特別協賛:日本ロレックス株式会社
【出演】
ギター:村治佳織 ♥
ギター:村治奏一 ♠
ヴァイオリン:川久保賜紀 ♦
【曲目】
[第1部]
パガニーニ:協奏曲的ソナタ イ長調 作品61 ♦♠
西村 朗:玉響(TAMAYURA)♠
ファリャ/コハンスキ編:スペイン民謡による組曲 ♦♠
   「ムーア人の衣装」「アストゥリアス地方の歌」「ホタ」「子守歌」「カンシオン」「ポロ」
[第2部]
村治佳織:バガモヨ ~タンザニアにて~ ♥
村治佳織:雨を見つける&一輪のスノードロップ ~E.R.Grosholz:詩集『こどもの時間』より~ ♥
村治佳織:島の記憶 ~五島列島にて~ ♥
C.ドメニコーニ:コユンババ I・II・III・IV ♥
藤井眞吾:ラプソディー・ジャパン
   ~序奏・さくら・花・通りゃんせ・かごめかごめ・浜辺の歌・ずいずいずっころばし・ふるさと~ ♥♠
《アンコール》
 J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ ♥♠♦

 認定NPO法人 難民を助ける会(AAR Japan)の主催による「3.11被災者のためのチャリティコンサート」に参加。「聴く」というよりは「参加」というイメージが強かったのは、コンサート自体がチャリティ目的であることと、AAR Japanの活動報告を兼ねていたからである。コンサートの[第1部]と[第2部]の始めにAAR Japanの代表の方から、今回は特に、東日本大震災の被災地での支援活動が紹介され、積極的に関わることになった村治香織さんの被災地訪問などについても紹介された。
 私は、お馴染みの川久保賜紀さんと村治奏一さんのデュオが聴けるということで、普通のコンサートのつもりでいたのだが、普段とはやや様子が違っていた。会場に集まってきていたのは、チャリティ参加を第一としていて音楽にはあまり詳しくはない人たちと、村治香織さんのファン層の人たちが多かったようで、賜紀さんのコンサートでいつも見かける顔ぶれは私と友人のYさんくらい。また、コンサートの開催告知もチャリティの世界が優先的だったようで、私が知ったときにはチケットはほとんど残っていなかった。主催者のAAR Japanに問い合わせたところ、2階バルコニーのB席なら取れるが、指定席なのに席は選べないという。まあそれでも、ということで「参加」することにしたのであった。

 久し振り、おそらく10年ぶりくらいに紀尾井ホールの2階バルコニー席に着く。ステージの右側の真横から見下ろす位置。ギターのためのPA用マイクロフォンとスピーカーが2台設置されているのが見える。ヴァイオリンはもちろんPAなしである。距離的にはステージのすぐ近くなのだが、聞こえ方は1階の前方席とはまったく違っていた。広い空間に拡散してしまうヴァイオリンの音と、PAを通してもなお音量の小さなギターの音が、残響音と渾然一体となって遠くから聞こえてくるというイメージで、どうにも心許ない。今日のところは「参加すること」に意義があるということで割り切ることにする。帰りがけに、些少ながら寄付も。

 演奏についてはあまり多くを語れない。何しろ、音の芯がぼやけてしまっていてキレイに聞こえないのである。賜紀さんのヴァイオリンでは装飾的な速いパッセージが残響音に埋もれてしまうし、奏一さんのギターは弱音のハーモニクスなどはほとんど聞こえないレベル。パガニーニの「協奏曲的ソナタ」とファリャの「スペイン民謡による組曲」は、お二人のデュオで何度か聴いているので、演奏のイメージはしっかりとアタマにインプットされているのに、肝腎の音が聴き取れないのである。
 というわけなので、想像力で補って聴くことにすれば、賜紀さんのヴァイオリンは、相変わらずエレガントで歌心に溢れていて、繊細で流れるように滑らかな旋律の歌わせ方や、重音のバランスと深み、艶やかで潤いのある音色など、どこを見ても一級品の演奏である。演奏中のヴァイオリンは上を向いているので、2階席でも音は来るが、残響音と一緒になってしまい、音に霧がかかったようになってしまう。一方ギターは楽器が前を向いているので、2階に来るのはスピーカーを介したこもったような音。このお二人の演奏も、いつも目の前で聴いているので、余計に聞こえ方の違いが気になってしまうのだろう。
 西村 朗さんの「玉響(たまゆら)」も奏一さんの演奏で、もちろんもっと良い条件で聴いたことがある(その時も賜紀さんと共演だった)。非常に繊細なイメージの曲なので、音響の乱れは少々つらいものがあった。細やかな音色の変化やかすかなハーモニクスなどが聞こえづらく、残響が曇ると不協和音の濁りが目立ってしまうのが残念であった。
 しかも、来場者にはクラシック音楽をよく知らない人が多かったようで、パガニーニでは楽章毎に、ファリャでは1曲毎に拍手が入るような状況であった。

 香織さんのオリジナル曲は初めて聴く曲ばかりだったが、こちらは旋律と和声が明瞭なので、まだ聴き取りやすかった。[第2部]の方が少しボリュームを上げていたかもしれない。
 「バガモヨ ~タンザニアにて~」は、香織さんがタンザニアを訪れた時の印象を曲にしたもので、自然の空気感がとても清涼に描かれている。「雨を見つける」と「一輪のスノードロップ」はE.R.Grosholzの詩集『こどもの時間』の中の2編の詩にインスピレーションを得て曲にしたもの。「雨を見つける」では外で楽しげにはしゃぎ回っている子供が振り出した雨に気づいて空を見上げる、といった情景が描かれている。「一輪のスノードロップ」は静寂の中、ひらひらと雪が舞う情景が、映像のように描かれる。いずれも優しい視線で情景を見ている感じがして心が温まるようだ。「島の記憶 ~五島列島にて~」は何度も訪問している五島列島の歴史や人々の思いを描いたもの。バロック調の曲が(宗教的な)雰囲気を盛り上げている。
 続いてドメニコーニの「コユンババ」という曲。ドメニコーニはイタリアのギタリスト。この曲では調弦を変えた楽器を使用した。6本の弦の内5本の調弦を変えているのだという。低弦がかなり低い印象があったので、6弦をEからC♯まで下げていたような感じであった。4つの楽章を持つ長い曲であった。
 最後は香織さんと奏一さんギター・デュオで「ラプソディー・ジャパン」。現代的な序奏に続いて、日本の童謡や歌曲の名曲がメドレーで続く。演奏は独特の日本的な滋養感が込められていてなかなか良かったと思うが、ギターが2本になると、低弦の開放弦の音が強調されてスピーカーから出てくるような感じで、聴いていても辛いものがあった。
 アンコールは、賜紀さんも参加して3名で、バッハの「主よ、人の望の喜びよ」。最も個音域の声部を受け持つ、賜紀さんのヴァイオリンが神々しく思えるほどの清らかな音色で、心が洗われるようであった。

 最後になってしまったが、本日のチャリティコンサートには、[第2部]から天皇皇后両陛下がご臨席された。休憩時間に2階の通路に報道関係者が大勢控えていたので何事かと思ったのだが、まさか両陛下のご来場とは。会場が急に厳かな雰囲気に変わり、良い意味での緊張感に包まれることになった。
 今日4月27日には赤坂御苑で「春の園遊会」が催されたはずなので、ご公務にお忙しく健康面は大丈夫なのか心配に思うが、お元気そうな姿で私たちに手を振ってくださったのには感激である。園遊会に招待されるのは社会貢献や活躍著しい方たちなので、私たち一般庶民には縁のない世界だが、クラシック音楽の世界では、時折こうした嬉しいハプニングがあり、皇族の方々と同じ空間と時間、同じ音楽を共有できることがある。両陛下が私たちと一緒に、香織さん、奏一さん、そして賜紀さんの演奏を聴き、拍手を送られたのである。3名も名誉なことであったろうと思う。
 ところがそのような僥倖に水を差すような出来事があった。畏れ多くも(とは少々時代がかった言い方だが)天皇皇后両陛下に対して「待ってました」とか「良く来たな」などという下品なヤジを飛ばした男が私のすく近くの席にいたのである。あまりにも下卑て野蛮な行為に周囲が凍り付く。見るといかにも軽薄そうな中年男でしたり顔でヘラヘラ笑っている。クラシック音楽のコンサートには絶対にいないタイプの男で(そもそもコンサート会場でヤジなど聴いたことがない!)、芸能界の周辺にでも蠢いていそうな、程度の悪そうな輩だ。もちろんAAR Japanの関係者であるはずもないし、チャリティのために来たとも思えない。香織さんには盛んにブラボーやフォーというゴリラみたいな叫び声を送っていたから香織さんのファンなのかもしれないが、香織さんもこんなヤツにブラボーと言われても嬉しくも何ともなく迷惑なだけだろう。まったく不謹慎極まりない、言語道断のバカ者である。両陛下のお気持ちを察するに、怒りを通り越して悲しくなってしまった。断言しておくが、クラシック音楽ファンには、こんなヤツは絶対にひとりもいない。

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