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9/11(木)N響Bプロ定期/プロムシュテット翁の円熟かつ溌剌としたモーツァルト39番とチャイコフスキー4番

2014年09月13日 01時31分42秒 | クラシックコンサート
NHK交響楽団 第1787回定期公演《Bプログラム 2日目》

2014年9月11日(木)19:00~ サントリーホール B席 2階 LA4列 18番 4,800円
指 揮: ヘルベルト・ブロムシュテット
管弦楽: NHK交響楽団
【曲目】
モーツァルト: 交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
チャイコフスキー: 交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

 9月に入ってNHK交響楽団も新シーズン(2014/2015)が始まった。開幕を飾るのは、N響名誉指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットさん。N響会員やファンたちの間でも最も人気のある指揮者である。今回は、定期公演のA・B・Cプログラムすべてを指揮することになっている。用意された曲目は、モーツァルトの最後の3つの交響曲、第39番、第40番、第41番「ジュピター」と、チャイコフスキーの後期3大交響曲、第4番、第5番、第6番「悲愴」の6曲。モーツァルトとチャイコフスキーを組み合わせて各公演を行う。9月10日・11日のBプロではモーツァルトの第39番とチャイコフスキーの第4番という組み合わせだ。この後、9月19日・20日のCプロで同様に第40番と第5番、9月27日・28日のAプロで「ジュピター」と「悲愴」という予定になっている。サントリーホールでのBプロが組み合わせとしては一番地味になるが、考えようによっては通好みのプログラムだといえよう。

 前半はモーツァルトの交響曲第39番。ブロムシュテットさんは御年87歳になるが、矍鑠としているとか、年齢を感じさせないとかいう表現がまったく当てはまらないほど、まったく普通に若い。もちろん、演奏が若々しく、溌剌としているのである。もちろんその辺の指揮者とはレベルが違うので、N響の演奏も緻密なアンサンブルとバランス感覚で、素晴らしい演奏を展開している。それも緊張感が高くピリピリしたムードとは真逆の、互いの信頼が創り出す、聴いていて心地よい音楽なのである。この辺りは円熟の境地といった感が強い。角がなく自然体。なのに溌剌としているのだ。
 オーケストラは、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを対向に配置し、第1の後方にチェロ、その奥にコントラバスがいる。向かって右側に内声部を奥という配置だ。今日は聴いている席が2階のLAブロックなので、残念なことにこの配置の効果を聴き取ることはできなかった。この曲にはオーボエがないので、クラリネットの音に合わせてチューニングしていた。
 LAブロックからだと、ほぼ左側の真横からステージを観るカタチになるが、木管も金管も打楽器もすべて見える位置であり、しかもステージ間近なので、各楽器の音はクリアに聞こえる。普通のオーケストラの演奏のイメージよりは、管楽器や打楽器が大きく聞こえるが、音がクリアなので、すっきりした印象になる。
 つまり、そうした音の印象と、ブロムシュテットさんの円熟かつ溌剌とした音楽がうまく溶け合って、得も言われぬ優雅で暖色系のモーツァルトであった。全体的にテンポはやや速め。リズム感が軽快だが、浮ついたところはなく、どっしりとした安定感があるのは、ティンパニの乾いた音が絶妙の強さで引き締めているからだろう。
 N響の演奏も隙がないというか手慣れているというか、素晴らしい。弦楽の澄んだ音色のアンサンブルは、ごく自然に聞こえるがとても心地よいものだし、フルート1、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2という小編成の管楽器のバランスがまた見事。刺激的なところがない代わりに、安心して音楽に身を委ねることができる、そんな演奏だ。

 後半はチャイコフスキーの交響曲第4番。金管のファンファーレのような序奏から、高品質の音が響く。やがて主部に入ると、弦も打楽器も加わり、緊密な演奏が力強く続いていく。やはり金管が大きく聞こえてしまうのはLAブロックだから仕方がないが、ソレを抜きにして考えれば、とても素晴らしい演奏に聞こえる。ブロムシュテットさんの指揮は、基本的にインテンポでスタンダードなものだが、全体から醸し出される角の取れた柔らかい印象と、イヤらしさがまったく感じられない自然体なところなどが、非常に聴きやすい音楽を作っていると思う。巨匠的に大仰なところもないが、かといって音楽には厚みも深みもあるし、若い指揮者にはない、何ともいえない大きさが感じられる。
 第2楽章、オーボエから弦に至る感傷的な主題も、よく聴けば気負いのない淡々とした演奏なのに、そうすることでかえって楽曲の持つ美しい本質を描き出しているようだ。
 第3楽章の弦楽のピツィカート。音自体が伸びないだけに、これに関してはさすがに1階で聴く方が良いかな、と思った。残響音ばかりが強く聞こえてしまい、モゴモゴとした音になってしまうのだ。中間部で木管が出てくると、目が覚めるように鮮やかに聞こえたものである。
 第4楽章のようなエネルギッシュな楽章に対して、ブロムシュテットさんの創り出す音楽は、溌剌とした躍動感があり、本当に年齢を感じさせない。というよりはむしろ、少年のような屈託のない輝きを感じさせる。若い指揮者のような欲がないのだろうか。計算ずくでもなく、打算的でもなく、ひたすら純粋に音楽を楽しんでいるかのようである。一言でいってしまえば、ブロムシュテットさんのお人柄がそのまま音楽になっているような感じなのだ。とても素直な気持ちで聴くことのできたチャイコフスキーであった。曲が終わったら、会場の各方角から一斉にBravo!!の声が上がった。劇的な感動を味わうというようなタイプの演奏ではないと思うのだが、思わずBravo!!と叫びたくなる、その気持ちはよく分かる素敵な演奏である。聴いていて、心が温かくなる演奏であった。

 N響のいつもの演奏は、どこかクールなところがあって、完全燃焼していないような気がしてしまうことが多い。日本でトップのオーケストラであることは間違いないのだが、何故か感動が薄いのである。ところが、今日のブロムシュテットさんの指揮で聴くN響は、とても温かく、人間味のある演奏に聞こえた。やはりお互いの良好な信頼関係が生み出すものなのだろう。久しぶりに(失礼)N響の素敵な演奏を聴いたという思いである。今シーズン(2014/2015)は、ちょっと真面目にN響を聴いてみようかと思っている。といってもサントリーホールのBプログラム定期とオーチャード定期だけだが(NHKホールにはあまり行きたいと思わないので)、友人から譲り受けた年間定期会員券を大事にしていこう。

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