●下村敦史 『闇に香る嘘』 講談社 | 新・駅から駅までウォーキング

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下村敦史 『闇に香る嘘』
           講談社 2014.8.5発行 



闇に香る嘘/講談社
¥1,674
Amazon.co.jp



★本の内容(Amazon.co.jpより)


村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、
検査の結果、適さないことが分かる。
和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも
頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。
中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に
失明していた和久は兄の顔を確認していない。


27年間、兄だと信じていた男は偽者なのでは
ないか――。
全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追
う。


選考委員の有栖川有栖氏が「絶対評価でA」
と絶賛し、選考会では満場一致で受賞が決定。
第60回を迎える記念の年にふさわしい、江戸
川乱歩賞受賞作!


★ここだけの話


視力を失って全盲となった村上和久が主人公
です。
まず、何も見えない日常生活の大変さがとて
もよくわかります。
目から入ってくる情報が全くない世界をこの
作品で事細かに教えてもらいました。


村上和久は、中国残留孤児で日本に永住帰化
した兄の竜彦が偽物ではないかと思うように
なりました。
孫の腎臓移植を頑として断り続け、検査すら
応じないからです。
自分の足で丹念に過去の事情を知っている人
を探しだし、当時のことを聞いて回ります。


物語の終盤で一気に加速するように、すべて
の謎が解明されます。
読んでいる時には全く気づきませんでした。
とても意外な事実が当時の満州で起きていた
のです。
なるほど、だからなんだ。
兄や母の態度や会話に納得できました。


この作品の中で俳句に隠された点字による暗
号が登場します。
江戸川乱歩へのオマージュ!
「二銭銅貨」に敬意を払ったのでしょうね。
ただ、少し無理があるように思いました。


目が見えないため、かなりサスペンスを味わ
う場面があります。
それが盛り上がりを加速させています。


大変おもしろい内容でした。
さらに最後は気持ちの良い終わり方をしてい
ます。
今年度の江戸川乱歩賞受賞作は星3つです。