ずっと忙しい日が続いており(むろん、これからもですが)なかなか美術館に足を運べなかったのですが、6月下旬、半月ぶりで美術鑑賞してきました。三井記念美術館で開催されている『特別展 錦絵誕生250年 フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!』になります。

春信一番!写楽二番!

アメリカでも屈指の美術館であるフィラデルフィア美術館には、実に4,000点以上の浮世絵が所蔵されており、中でも選りすぐりの作品が来日し、展示されるとのこと。いわば“里帰り”ですね。浮世絵の成り立ちから発展の経緯などの開設も詳しく、展示作品を眺めているだけでその歴史も終えるようになっているのは親切だと思いました。

絵師についても今回は前期展示ですが、今回の目玉である鈴木晴信、東洲斎写楽を筆頭に、古くから鳥居清信や奥村政信、さらには勝川春章、喜多川歌麿、鳥文斎栄之、渓斎英泉、葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重などオールスターキャスト。さらにはめったにお目にかかることのできない上方錦絵にいたるまで、大物都呼ばれる絵師の作品の大半は登場していたのではないでしょうか。

見たことのある作品も少なくありませんでしたが、いずれも状態が非常によく、大切に保存されてきたことが分かります。日本の美術品についての理解が海外でも深いことに、いまさらながら感動しますね。特に春信の作品なんかどれもキレイで、当時の浮世絵初期の息吹のようなものも感じられました。

今回、もっともインパクトを受けたのが春信の『やつし芦葉達磨』ですね。普通の浮世って、当然ながら墨の輪郭線があるわけですけど、これはないんですよ。赤い着物の部分だけでも3回も摺りを重ねているとのこと。春信の意匠ももちろん素晴らしいんですけど、表現方法を極限まで追求した彫師、摺師のプライドの様なものも感じます。これが250年も前に出版されたものであるということを考えると、日本の職人の技術に対する崇高なこだわりははるか昔からであったということで、同じ日本人として誇りに感じます。前後期と通期で展示されるとのことで、この作品だけでも展示会に足を運ぶ価値あり、です。

個人的には勝川春潮の貴重な作品を拝むことができたのがうれしかったですね。『秀句合四季之花 水仙』というもので、いわゆる“紅嫌い”です。栄之の門人・鳥高斎栄昌の『めんないちどり』も美しかったですね。上方錦絵は少なかったものの、渋紙を切り抜いて刷毛で絵具を摺る『合羽摺』というものが当地では伝統として根付いていたということで、勉強になりましたね。

歌麿や北斎、国芳、広重らの作品は、こういうそうそうたるメンツの中でも際立っているように感じます。いまでも人気が高い理由がわかるような気がしますね。

前期は7月20日まで。後期は7月22日からということですが、再訪するかどうか(というよりできるかどうか?)迷うところです。


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