太田記念美術館で開催されている『特別展 月岡芳年 月百姿』を鑑賞してきました。

 

 

2ヶ月連続で月岡芳年の特集です。今回は、晩年の傑作である『月百姿』がテーマです。何度も目にした作品ではありますが、100点を一挙公開ということで、すべてを一気に見る機会はそうそうないでしょう。壮観でした。

 

月にちなんだ様々なシーンが描かれており、テーマも様々。今回は美しき女たち、妖怪・幽霊・神仏、勇ましき男たち、風雅・郷愁・悲哀といった感じで構成されていました。月見の季節に相応しい、風趣豊かな展覧会でしたね。

 

師匠・歌川国芳譲りの武将や妖怪など、作品に登場するキャラは多様ですが、いずれも流麗かつ繊細で美しく、間近で鑑賞できる地下展示室では、その美麗な表現に驚かされました。大正・昭和以降の小説の挿絵や劇画に通じるものがあるように思います。現代であればイラストレーターやグラフィックデザイナーとして大成しそうですね。

 

なかでも美女を描いた作品の美しさに、息をのみました。『桜さくすみだの川にこぐふねもくれて関屋に月をこそ見れ 水木辰の助』、『朝野川晴雪月 孝女ちか子』、『四條納涼』などは素晴らしかったですね。状態も良かったです。

 

悲恋、悲話も多く、どこか郷愁を誘うような作品が多いのも特徴ですね。でも、妖怪などは恐ろしさよりも美しさの方が際立っているように感じました。また、最後の方に展示されていた『月夜釜 小鮒の源吾 嶋矢伴蔵』以降の作品は、ポンチ絵のようなユーモアにあふれた描写となっていたのも面白かったですね。久し振りの浮世絵鑑賞だったので、大変楽しめました。

 

そういえば、地下展示室でのこと。私の前に、中年女性の2人組のお客さんがいたんですけど、作品を見ながら話し込んだりしていて、滞留してしまったんですね。まあ、よくあることだから…と思っていたら、スタッフの女性がその2人組に「後ろが詰まっていますので…」と、サクサク見るように促したのです。

 

その後も多少ノロノロではありましたが、一応こちらを気にしていたのか、多少は早めに進むようになりました。見終わって展示室を後にしようとすると、再びスタッフの方が「先ほどは申し訳ありませんでした」と頭を下げられたのです。ビックリしました。

 

他の美術館でも、グループで鑑賞している方々のなかには作品を指さして話し込み、なかなか前に進まない、という事態となることは珍しくありません。他館でも、ぜひこのような滞留を作る集団がいたら注意してほしいなあ、と思います。作品はもちろん、太田記念美術館のスタッフの対応の素晴らしさに感動した、そんな1日でした。

 


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