”生かし合う” 『平成29年2月掲載』
◆ともによりよく生きるために・・・・⑥
人間の命は尊い。尊いものは誰もが尊重しなければならぬ。
ところが、自分の命の尊いことはわかっても、他人の命もまた尊いことは忘れがちである。
ともすれば私心に走り私利私欲が先に立つ。
つまり、自分にとらわれるということで、これも人情としてやむをえないことかもしれない。
しかし、これではほんとうに、おたがい相互の反映は生まれないであろう。
人間本来の姿は生かされないであろう。
やはり、ある場合には自己を没却して、まず相手を立てる。
自己を去って相手を生かす。そうした考えに立ってみなければならない。
そこに相手も生き、自己も生きる力強い繁栄の姿がある。尊い人間の姿がある。
自己を捨てることによってまず相手が生きる。
その相手が生きて、自己もまたおのずから生きるようになる。
これはいわば双方の生かし合いではなかろうか。
そこから繁栄が生まれ、ゆたかな平和と幸福が生まれてくる。
おたがいに、ひろく社会の繁栄に寄与するため、
おたがいを生かし合う謙虚なものの考え方を養いたい。
松下幸之助