”人間だけが” 『平成29年5月掲載』

 

  ◆ ともによりよく生きるために ⑨

 

  この世の中、見方によっては、

 すべて人と人との約束のうえに成り立っているといってもよい。

 友人との待ち合わせの時間の約束から、金銭物品の貸借の約束、

 さらには社則や国家の法律というものも、お互いの生活を秩序だて円滑にするための、

 一つの大事な約束事であるといってもよい。

 

  約束はおたがいの信用の上に花ひらく。だからこれらの約束を守るか守らないかは、

 人間の精神の高まりを示す一つのバロメーターであって、道義とか道徳というものも、

 こうしたところにその成果の如何をあらわしてくる。

 

  自分に都合が悪くなったからといって、

 平気で約束を破るというのは、これはまさに動物の世界。

 人間だけが、おたがいにかわした約束は、

 これをキチンと守るという天与の高い精神の働きを持っているのである。

 

  もしもこの精神が力弱くなったら、その影響は社会生活のあらゆる面に、

 物心ともの大きなマイナスとなってあらわれてくる。

 単に待ち合わせの時間をムダにするというようなことだけではことはすまないであろう。

 おたがいに、約束は守りたい。

 

  松下幸之助

 


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