『眼前の小利』・・・第83回

 自ら決断を下すとき⑤

 平成30年12月掲載

 

 一匹狂えば千匹狂うというが、これは何も、馬だけにかぎったことではない。人間でも、一人がちょっとした心得ちがいをしたならば、それに引きずられてまた多くの人が道を誤る。ことに、それが利欲にかかわった問題となると、とかく人の判断は狂いやすい。そして眼前の小利にとらわれる。

 

 眼前の小利にとらわれるな、とは昔からのことわざであるが、小利にとらわれては、結局は損をする。その損も、単に自分だけで終わるならまだ罪は軽いが、今日の世の中のように、人と人と、仕事と仕事とがたがいに密接につながっているときには、一人の損がみんなの損となり、その心得ちがいは大変な結果を生む。

 

 こんなことは、いまさら事新しくいう必要もないのだが、この世の中、やっぱり一部の人のちょっとした心得ちがいから、いろいろの問題がひき起こされていることを思えば、眼前の小利にとらわれるなと、度も何度も繰り返していいたくもなってくる。別にむつかしいことを言うつもりはない。またいっても詮ないことだと考えてもいない。こんなことは結局、人の良識に訴えるのが根本で、だから何度も何度もあきずにいいたいのである。

 

松下幸之助


 



人気ブログランキング



 

 

 


ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村