■ブタ映画『オクチャ』にみる日韓比較アニマル記号論!*´ヮ`)/ | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。


ちょっと宮崎駿的な構図も感じられた『オクチャ』。宮崎アニメは世界に影響を与えていますね。


●「ブタ」の描写に対する違和感について


今絶賛上映中のポン・ジュノ監督の最新作『オクチャ(옥자)』です。いやあ、予告を見て「これはこういう話なんだろうなあ」と思っていた、そのとおりのストーリーではありましたが、そうでありながら感動のほうは期待以上でした。主人公の少女が「オクチャ」と戯れる大自然の映像が本当にすばらしかったですし、思ったとおり『スノーピアサー(雪国列車)』と同じように寓話的なファンタジー作であり、『グエムル』と同じように少女と資本主義巨大権力(特にアメリカの象徴する)という対立構造の中に描き出す、きわめて社会批判的な問題作であったと思います。(*´ヮ`)/


でも、そこに感じる感情自体は異常にリアルで衝撃的であり、それゆえにも泣ける話でした。そのリアルさは、これまで誰もやらなかったタブーを犯した結果として私たちに迫り来る残酷なリアリティですよね。すなわち「食用のブタちゃんがメチャクチャかわいく賢い」という大問題です。これまでの「ペットのブタはかわいく描いてもいいが、食べられるブタはかわいく描くな。皆が食用のブタに愛情を感じることは社会的にマイナスだから」という、大衆コンテンツにおける暗黙の了解、それを意図的に叩き壊しているわけですよね。(((°`∇´°;)))


ところで、それはそうであったとしても、私たち日本人が見た時には、その「ブタ」の描かれ方が何か違う、という感覚を得るのではないかと思います。これを観ながら多くの日本人は、「ブタ」ってこういう動物だったかなあという違和感を感じるのではないでしょうか。それは実は、日韓の文化において、そもそも「ブタ」というものに対する記号的意味合いの違いが根底にあるからだろうと思いました。それゆえ今日は、映画の話よりもそちらを書いてみようかと思います。



●きれい静か利口な「オクチャ」がブタ?


一般に、日本では「ブタ」はひどい悪口にもなる言葉で、忌み嫌われるイメージである上に、記号的に醜悪の象徴のようにもなっています。しかし、韓国では基本的にはその逆に、かわいく福がある動物として多くの子供の愛称「クルトェジ」、「クルクリ」ともなっており、それだけではなく、縁起がよく、祭壇にその頭が供えられる神聖なる動物の一つともなっています。もちろんその神聖さのゆえんが「福がある=財運でお金が儲かる=現世利益」ということでもあるので、そういう意味では重なっている部分もあるのですが。


干支が中国、韓国、日本と伝わってくる上で、日本では「ブタ年」を「イノシシ年」に変えてしまっていますが、本来は「ブタ年」なのであって、韓国では「ブタ年」のままで、十二支の中で最も人気がある干支として、実際に子供の幸せを願ってその年の出生率が上がります。他にも、日本では蛇の夢を見たら、いい夢だとして宝くじを買いますが、韓国ではブタの夢を見たら買うということになっています。ちなみに、我が息子の幼稚園の時のあだ名も「クルトェジ(꿀돼지=ブーブーブタ)」でしたし、当時は家に電話をして息子が取ると、私「誰だい?」、息子「(元気に)ブタだよ!」という会話(韓国語)もなされていました。(^ヮ^;)


なぜこんなに近い国同士で、そんな違いが生まれてしまうのでしょうか。それが文化の構造ゆえの人間観の違いなわけです。


日本でなぜ「ブタ」が悪口になるかということを考えてみると、以前、ご紹介したように、日本のように社会全体の和を最優先する〈社会原理〉の国では、ブタが象徴する、自己の欲望をあからさまに表すということが、集団の和を乱す、忌み嫌われる「悪」となるからです。『千と千尋の神隠し』で、千尋の両親が食欲をむき出しにしているうちに醜いブタに変わるというシーンがありましたが、まさにあれこそが、最も日本文化的な「ブタ」の持つ記号性であるわけです。しかし、そもそも社会の和のようなものを日本のようには優先しない韓国では、個人の欲望に忠実であること、それを率直に表現すること、それ自体を特に悪く捉える理由がない、ということになります。


ということで、今回の「スーパーピッグ」である「オクチャ」は、見かけはかなりカバのほうに似ていて、私たち日本人が「ブタ」に抱く、汚くうるさく衝動的なイメージとはかなり距離が置かれており、とことんまできれいで静かで実に利口な存在として描かれているのでした。これだと日本人は「結局、ブタの話ではなかったのではないか」と思ってしまうかもしれませんが、実は韓国人にとっての記号的ブタの役割を充分に果たす、神聖な動物として描かれているのだ、ということなのでした。


逆に韓国では、何が日本の「ブタ」のように忌み嫌われる「悪」の記号となり得るか。それは「イヌ」です。韓国語で「ケー」ですが、これは韓国では“キング・オブ・悪口”であって、「イヌのような」という言葉が最も人を侮辱する言葉として使われます。その中でも最も悪い使われ方は「イヌの子」です。なぜそんなかわいい「子犬ちゃん」みたいな言葉がひどい悪口になるのか。それこそが、韓国文化の〈家庭原理〉の中心にある血統意識のゆえであるわけです。すなわち、イヌという動物は、発情すると時と場所をわきまえずにすぐに交尾に及ぶイメージがあり、相手を選ばない、性的に乱れたイメージの代表として、血統が汚い、根っこがどこの馬の骨か分からない、というイメージになっているわけですね。



●ジェイクの“ジム・キャリー演技”にも注目!


もうお気づきのように、これらは単なる動物のイメージ問題にとどまらず、日本人と韓国人が出会った時の、相手の見え方の問題にもなっています。日本人は、韓国人が自分の感情を率直に表すことが社会的に悪であるように思ってしまい、韓国人は、日本人がいとこ同士でも結婚でき、苗字の数が29万もあったり、由緒ある家でも婿養子を跡継ぎにしたりする、というような習慣がなかなか理解できません。しかしそれらは皆、両国の文化の構造としての「社会原理」と「家庭原理」の違いによる誤解であるということを、私たちは少しずつ知っていかなければなりませんよね。(*´ヮ`)/


あと、最後に出演していたハリウッド俳優のことを付け加えたいのですが、『スノーピアサー』に続いて映画全体の雰囲気をつくっているティルダ・スウィントンさんもよかったですが、私は今回、ジェイク・ジレンホールさんに何より驚きました。この人はこれまでどこか陰がある二枚目役が主だったのに、2014年に『ナイト・クローラー』でクレージーな役を演じてみたら、私の目には彼はジム・キャリーにそっくりだ!と見えたわけです。でもそれがあまりにも似ていたがゆえに、まさかでもそちらには行かないだろうなあと思ったのですが、今回とうとうやってしまいましたね!キャラが完全に、ほとんど99%ジム・キャリーでした。それもまた『オクチャ』の見所だというお話でした!ヾ(≧∇≦)〃♪



【あらすじ】 うちに帰る、きっと一緒に!


江原道の田舎少女「ミジャ」(アン・ソヒョン)にオクチャは10年間共に育ったかけがえのない友達であり、大切な家族だ。


自然の中で平和に過ごしていたある日、グローバル企業「ミランド」が現れ、突然オクチャをニューヨークに連れていき、お祖父さん(ピョン・ヒボン)が止めるのも聞かず、ミジャはオクチャを救うためにやみくもに危険千万なる旅に飛び出す。


オクチャを活用した極秘の「スーパーブタ・プロジェクト」を推進中の「ミランド・コーポレイション」CEOルーシー・ミランド(ティルダ・スウィントン)、オクチャを利用して第二の全盛期を夢見る動物学者ジョニー(ジェイク・ジレンホール)、オクチャを前に立ててまた別の作戦をなそうとする秘密動物保護団体ALFまで。


各自の利権がオクチャを取り巻く欲望に満ちた世界に対抗して、オクチャを救出しようとするミジャの行く道はますます険しくなるが…。

















ポン・ジュノ監督の最新作『オクチャ(옥자)』予告編。

☆。.:*:・'☆'・:*:.。.:*:・'゜☆。.:*・'゜☆
韓国情報ランキングに、現在参加中です。
ブログランキング
↑上のバナーをクリックするだけで、一票が入ります!
更新を願って下さる方は、よろしくお願いいたします。