小学生の時、
自分で初めて買ったレコードは岩崎宏美の『未来』だった。
初めて行ったコンサートも彼女のリサイタルで、
貰ったサインはずっと大事にしていた。
今でも探せば何処かにあるんじゃないかな。
土曜(11/21)の夜、
その岩崎宏美の40周年のコンサートに行って来た。
地元の小さな文化ホール。
いつも娘たちの合唱や吹奏楽を見に行ったホールだ。
一曲目のすみれ色の涙の、
すみれって、
という最初の声が響いた瞬間、
カラダに電気が走った。
感動するだろうとは思っていたが想像以上だった。
若い頃の突き抜けた感じではなかったが、
相変わらず伸びやかで、
そして柔らかい歌声はあの頃のままだ。
歌ってくれる曲の殆どを知っていた。
音が流れると自然に口ずさめるくらい、
歌詞も頭に残っていた。
40年の時が一瞬の内に今になった。
僕も彼女も十代になっていた。
夢のような2時間余りの時を過ごし、
思い余ってCDを買い握手会に参加した。
列に並んでワクワクして待っていたのだが、
いざ本人を前にして、
あれ?と思う。
そこにいたのは、
さっきの舞台にいた輝きに彩られた岩崎宏美ではなく、
とても綺麗ではあるのだけど、
やっぱり今は57歳になったひとりのおばさんだった。
『9センチのピンヒールをいつまで履けるかしら?』
と自虐ネタのMCもあったけれど、
何となくまだまだだろうと高を括っていたのだが、
決してそんなことはなくて、
とてもとても物凄い努力の上に、
今日のステージは成り立っていたのだと実感した。
40年を『奇跡だ』と話していた意味が分かった気がした。
コンサートのタイトル曲、
『光の軌跡』の歌詞には、
『まだ走り続けるのは、未来の自分に出会うため』
とあった。
彼女はきっと頑張るだろう。
だったら僕も、
また彼女に会いに行けるように、
頑張らなくちゃいけないと思った。
握手をしながら
『これからも頑張ってください』と声を掛けた。
『はい』と答えた彼女の笑顔がまだ瞼の裏側にある。
それはいつの間にかまた十代の君になっていた。
あの時、
握手をしてもらった手をしばらく洗わなかった気持ちが蘇って、
勝手に赤くなる。
鏡の中の僕も間違いなく50過ぎだったけれど、
心は紛れもない十代だった。
歌はいいな。
もうすぐ忘年会シーズン、
もしカラオケの機会があったら、
誰か岩崎宏美の歌を歌ってくれないかな。
涙もろくなったオヤジには、
ちょっときついかもしれないけど。