平成28年の宝塚記念。


思いきり気になっていたピンクのカーテンのポスターと、

真ん中に写った架純ちゃん。

3連勝中の8枠。

出走馬すら確定する前の先週火曜日に発表された、

出目金予想が指名した9番ドゥラメンテ。

イナリワンとの類似性が気になって仕方がなかった3番キタサンブラック。

キーワードはシッカリ出揃っていたのに、

馬券の方は、枠連5-8しか取れなかった(しかも何故か端数の800円)。

それでも的中は的中。

素直に「よし!」としたいところなのだが、

このレースの焦点はその後にあった。


勝ったマリアライトに続いて、

2着に追い込んだドゥラメンテの姿を写したTV画像に、

M.デムーロが乗っていなかった。

解説をしていたアンカツの、

「どこか気になるところがあったのでしょう」

と平静を装った声が震えている。

あの陽気なイタリアーノ、

M.デムーロがうつむいて歩く姿は、

ドゥラメンテがただならぬ事態であることを、

テレビ越しのボクにも容易に想像させた。


レースは最初からうまくいかなかった。

スタートで後手を踏み後ろから2番手の位置取りになる。

内回りで直線が短いコース、

4コーナーで後ろにいたらダメ、

とレース前に語っていたM.デムーロに、

武豊が立ち塞がる。

やや重にも関わらず、

59秒台のラップで逃げたキタサンブラックのペースに、

前に押し上げることは出来ない。

速すぎるようでいながら、

このペースでも最後まで持つと信じた武豊が、

唯一気にしていたのはドゥラメンテの位置だった。

4コーナー。振り向いた武豊の目に、

ドゥラメンテの位置はどう写ったのだろう。

正直なところ、

勝ったと思ったのではなかったろうか。

ダメと言っていた4コーナー後方の位置取りを余儀なくされたデムーロは、

やむを得ず短い直線勝負に賭ける。

並みの馬なら到底届かない。

いやG1レースに出走している強い馬たちを相手にして、

ドゥラメンテといえども、

届くような位置ではなかった。

それでも勝負しないわけにはならないわけがあった。

M.デムーロの檄に応えて、

前に行く馬たちを必死で追いかける。

追いつくはずのない位置から、

逃げたキタサンブラックを交わしたところが、

ゴールだった。

勝ったマリアライトには、

僅かに及ばなかったが、

世界No.1の脚を見せつけた2着。

物凄いレースだった。


M.デムーロが下馬したシーンが、

TV画面に映ったのは、

この『とんでもないものを見た』

と思った次の瞬間のことであった。



ドゥラメンテが、

どうしても勝負しなければならなかった理由。

それは、

勝ちたいとか、勝てたらいいとか、

勝とうと思って勝てるものじゃないとか、

無欲の勝利とか、

そういう次元のものではない。

勝つしかない。

勝たねばならない。

それがこの馬に課せられた宿命だった。


ファン投票では6位だったが、

単勝人気は断然の1番人気だった。

この数字が全てを表していると思った。

このねじれに、

ボクは言いようのない『不穏』を感じたのだ。


去年も皐月賞、日本ダービーを圧倒的な強さで連覇して、

いざ凱旋門賞に挑もうとしたところを故障でとん挫した。

復帰初戦の今年の中山記念を勝ったものの、

ゴール前でアンビシャスに詰め寄られるレース振りに、

あの圧倒的な強さを彷彿としなかったのは、

決してボクだけではあるまい。

そしてDSCでの落鉄。

2着には頑張ったものの、

『不運』では片づけられない、

ドゥラメンテの『宿命』を見た気がした。

ボクがねじれに抱いた言いようのない『不穏』は、

こんな背景があってのことだった。


もし、飛び抜けた力がなければ、

こんなことにはならなかっただろう。

もし、全力を出し切ることをしなければ、

こんなことにはならなかっただろう。

4コーナーのあの位置、

勝てないと思えば、

M.デムーロも全力で追いはしなかったはずだ。

このレースを見ていた誰もが諦めた中で、

デムーロは勝利を信じて追い、

そしてドゥラメンテも、

その期待に応えようと全力で走った。

たとえ肺が悲鳴を上げても、

たとえ脚の骨が折れていたとしても、

ゴールを過ぎるまでは、

決して頑張ることをやめない、

それがドゥラメンテという馬である。



無事是名馬という言葉がある。

そんな馬の良さも、強さも良く分かる。

歴史に名を残す馬は、皆そういう馬たちだ。

ドゥラメンテはその宿命故に、

哀しいかな歴史に名を残せる馬にはなり得ないかも知れない。

しかし、

ボクはドゥラメンテの様な、

どうしようもない『運命』に囚われた馬に、

心をさらわれる。


もう一度。


もう一度だけでいいから、

ターフに帰ってきて欲しいと、心から願う。

そしてきっとキミは、

帰って来てくれるだろうとも信じている。

だけど、

次にキミのパドックの姿を見たら、

僕は泣いてしまうかも知れないな。


全力でやる、

という、ただそれだけのことに、

何度も挫けてばかりいる今のボクには、

きっとキミの姿は眩し過ぎて、

まともに見ることさえ出来ないかも知れない。


でもまだ、

諦めるわけにはいかないよな。

君の走りを見てそう思う。

その日に流すだろう涙がどんな味になるのかは、

今日からのボクの生き方次第でもあるのだから。


だから今年のボクの宝塚記念は、

まだ、終わっていない。



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