12月DVD特選映画【35】★映画のMIKATA「ナチズムとホロコースト」★映画をMITAKA | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

DVD特選映画≪ナチズムとホロコースト≫のテーマで、これまで私が観賞した映画です。ホロコースト関連の映画は次々と新作が公開されて、累積しています。




(赤文字は既に映画館で鑑賞した作品と映画ブログで紹介した作品です)

①『ミケランジェロの暗号』(2011年公開、ヴォルフガング・ムルンベルガー 監督)
②『黄金のアデーレ 名画の帰還』(サイモン・カーティス監督、2015年公開)
③『ミケランジェロ・プロジェクト』(2013年公開、ジョージ・クルーニー監督。)
④『アドルフの画集』 (2002年公開、 メノ・メイエス監督)
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⑤「顔のないヒットラーたち」 (2014年公開、ジュリオ・リッチャレッリ 監督)
⑥「スベャリスト/自覚なき殺戮者」(1999年公開、エイアル・シヴァン監督)
➆『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』(2015年公開、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督)
⑧『愛を読むひと』(2008年公開、スティーヴン・ダルドリー監督、ベルンハルト・シュリンク原作。デヴットヘア脚本)
⑨『ハンナアレント』(2012年公開、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)

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⑩「黄色い星の子供たち」 (2010年公開、ローズ・ボッシュ監督)
⑪「サラの鍵」(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)

⑫「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)
⑬「縞模様のパジャマの少年」(2008年、マーク・ハーマン監督)
⑭「さよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)
⑮「悪童日記」 (2013年、ヤーノシュ・サース監督)
⑯「バティニョールおじさん」 (2002年公開、ジェラール・ジュニョー 監督)

⑰『ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)

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⑱「あの日のように抱きしめて」 (2014年、クリスティアン・ペッツォルト監督)

⑲「シンドラーのリスト」 (1993年公開、スティーヴン・スピルバーグ 監督)

⑳「アンナとロッテ」 (2002年公開、ベン・ソムボハールト監督)

㉑「ヒトラーの贋札」 (2007年公開、ステファン・ルツォヴィツキー 監督)

㉒「ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002年公開、コスタ=ガヴラス監督)

㉓『ワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー監督)

㉔『杉原千畝 スギハラチウネ』 (2015年公開、チェリン・グラック 監督)

㉕『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)

㉖『帰ってきたヒトラー』 (2015年公開、ダーヴィト・ヴネント監督)

㉗『奇跡の教室/受け継ぐ者たちへ』 (2014年公開、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 監督)
㉘『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年公開、スティーヴン・ホプキンス 監督

㉙『ソフィーの選択』(1982年公開、アラン・J・パクラ監督)

㉚『手紙は憶えている』 (2015年公開、アトム・エゴヤン監督)

㉛「わが教え子ヒトラー」(2007年公開、ダニー・レヴィ 監督)

㉜「ディファイアン」(2008年公開、エドワード・ズウィック 監督)
㉝「アイアン・スカイ」( 2012年公開、ティモ・ヴオレンソラ監督)

㉝「善き人」(2008年公開、ヴィセンテ・アモリン監督)

㉞「サウルの息子」 (2015年公開、ネメシュ・ラースロー監督)
㉟『戦場のピアニス2002年公開、ロマン・ポランスキー監督)
㊱『夜と霧』(1955年公開、アラン・レネ 監督)
㊲「灰の記憶」(2002年公開、ティム・ブレイク・ネルソン 監督)

㊳「謀議」 (2001年公開、フランク・ピアソン監督) 

㊴「ナチスが最も恐れた男」(2008年公開、エスペン・サンドベリヨアヒム・ローニング 監督)

㊵「囚われのサーカス」(2008年公開、ポール・シュレイダー監督)

㊷「アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト」(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー監督)

㊸「消えたその声が、その名を呼ぶ」(2015年公開、ファティ・アキン 監督)
㊹『白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)

㊺「エリート養成機関 ナボラ」(2004年公開、デニス・ガンゼル監督)

㊻「ヒットラー最後の12日間」(2004年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル 監督)

㊼「カティンの森」(2007年公開、アンジェイ・ワイダ監督)

㊽「あの日あの時愛の記憶」(2011年、アンナ・ジャスティス監督)

㊾「誰がために」(2008年公開、オーレ・クリスチャン・マセン 監督


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今回のDVD特選映画≪ナチズムとホロコースト≫は、子供たちが主役級で登場する映画を「アウシュヴッツ」という視点で選択しました。つまり、ナチズムの時代の子供たちはどのように危機の時代を生き抜いたかを映像化した作品8本をまとめてみました。


⑩「黄色い星の子供たち」 (2010年公開、ローズ・ボッシュ監督)
⑪「サラの鍵」(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)

⑫「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)
⑬「縞模様のパジャマの少年」( 2008年、マーク・ハーマン監督)
⑭「
さよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)
⑮「悪童日記」 (2013年、ヤーノシュ・サース監督)
⑯「バティニョールおじさん」 (2002年公開、ジェラール・ジュニョー 監督)

⑰『ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)

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⑩~⑰の作品は、どれもこれも子供を主人公にした作品です、がそれら名作秀作での中でも、マーク・ハーマン監督の 「縞模様のパジャマの少年」を特に代表作として1本に選びました。あの困難で息苦しい時代を、子供ながらも生き抜いたーというよりも、子供のあどけない純真さが却って、命の脆さと愛おしさと、時代の残酷さに悲しみを誘う作品でした。


ナチス将校を父親に持つドイツ人少年8歳の少年ブルーノは、ナチス将校の父の出世でベルリン郊外に引っ越すことになる。そのドイツ軍将校の豪邸の裏庭の森の奥には、鉄条網で覆われた強制収容所内があった。ジョン・ボイン原作の「縞模様のパジャマの少年」を、私は最も子供のあどけない純真さと、それに反してユダヤ人の迫害という残酷さを、あの刺々しい鉄条網が良く表現しているな…と思いました。二人の子供の間に張りめぐされたバラ線は、ドイツ人もユダヤ人も差別しなかった。友だちもいないいだずらっ子のブルーノは、好奇心に負けて、親が行ってはいけないと止めていた窓の先の裏庭を冒険する。森の奥には鉄条網で覆われた広場があり、その先には縞模様のパジャマを着た少年シュムエルがいた。二人は、コッソリたびたび鉄条網を挟んで遊んでいた。いつの間にか二人は友情を育み、ある日ブルーノは招きに応じて柵を越えて、シュムエルと共に中に侵入し、二人で危険な遊びに夢中になている間に、大人たちの行列に交じって一緒に歩き、シャワー室の中に入ってしまう…。そこは毒ガスの部屋だった。まさか、我が子がガス室の中に紛れ込んでいるとは思いたくないが、強制収容所の所長である父親は、息子の失踪を知り、慌てて所内を探すが、ブルーノは既にガス室の中に入っていた…。純真であどけないだけに、幼い二人の少年の結末は尚更に幼気ない悲劇でした。


「ホロコースト」の通常の迫害関係では、ユダヤ人が被害者ですが、さよなら、アドルフ」では、ナチス親衛隊高官の父に持つ家族が、終戦直後に、唯一の保護者であった母でさえ、ハンブルクの祖母の家へ行きなさいーとち言い残して消えてしまう。14歳の少女ローレ(ザスキア・ローゼンダール)は、妹と弟と共に南ドイツから900キロ離れたお婆さんを頼って、子供だけで旅をすることになる…。途中、ドイツ人というだけで逆に様々な偏見と迫害にさらされるという映画でした。


黄色い星の子供たち」 と「サラの鍵」の2作はー。2作品ともドイツ占領下のフランスが舞台となっています。タチアナ・ド・ロネ原作の「サラの鍵」では、フランス・ヴィシー政権時代にヴェルディヴ競輪場に検挙され連れてこられ収容されたユダヤ系フランス人の中に、10才の少女サラの家族がいた。サラは収容される直前、警察の目を逃れて弟ミシェルを物置の納戸の奥に隠し、姉が帰るまで絶対外に出てはならないと言い残して検挙された。それから60年後。、パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリアは、アウシュヴィッツに送られた家族を取材するうちに、その当時サラが住んでいたアパートの金庫から、サラの手紙を発見し、収容所から生き残ったサラと納戸に隠したミシェルの存在を調べるうちに、納戸の穴倉の中でじっとしたままで飢え死にした、当時幼い弟の悲劇を知ることとなる・・・。


1942年7月16日、ドイツ・ナチス占領下にあったヴィシー政権時代のフランスで起こったユダヤ人迫害を映画化してる2作品は、フランスのこの時代をとりあげる時に、必ず登場する映画です。1942年7月16日、フランス国籍を持ち長年フランスに住んでいるユダヤ人や、フランス国内で生まれたその子供たちでさえも、公園やレストランなどへの立ち入りを排斥され、味方であるはずのフランス警察によってユダヤ人約1万3000人が胸に黄色い星の布どりをした洋服を強制されて、自宅から一斉検挙された。一度冬季競輪場「ヴェロドローム・ディヴェール」に強制的に押し込まれ、各地の強制収容所へ送られた。ドイツ軍のユダヤ人虐殺に協力したフランスのホロコースト政治を描いたディヴェール事件を映画化したものです。長い間フランス国内では、、「ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件」に触れることはタブーとされていました。「黄色い星の子供たち」のボシュ監督自身の家族もユダヤ人であり、劇中のウェイスマン一家の近所に居住していた。この映画も当時の生き残った人たちを取材して製作した。最近日本で公開の『奇跡の教室/受け継ぐ者たちへ』 (2014年公開、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 監督)は、ユダヤ人の迫害と、その子供たちの悲惨なありさまを調べて、作文コンクールの題材にしているフランスの学校が舞台でした。


ライフ・イズ・ビューティフル」は、ユダヤ系イタリア人の親子グイドとドーラとジョズエは、北イタリアに駐留してきたナチス・ドイツによって、強制収容所に送られてしまう。母と離れ離れで不安がる愛息ジョズエに対し、父・グイドは「これはゲームなんだ。泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。いい子にしていれば点数がもらえて、1000点とったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ・・・」と、慰めの嘘をつく。絶望的で危険な収容所の生活は、子供心には楽しい収容所ゲームに変わった。子供たちは毒ガスで殺されるシャワー室送りの時、ある子は便器の中にもぐり、ある子は塀の板を外した穴に隠れ、ジョズエもベッドに隠れてガス室を逃れた。子供のサバイバル能力がこの映画ではいかんなく発揮されていました。ナチス撤退後の朝、収容所に連合軍の戦車が現われ、若い兵士が、父の言う通りゲームの勝者のご褒美としてジョズエを戦車に乗せた・・・。最後のシーンは、父・グイドの言う通りであった。



バティニョールおじさん」では、ナチス占領下のパリで肉屋のバティニョールがユダヤ人の子どもを匿い、スイス領に逃亡させる映画です。『ソハの地下道』は、ナチス・ドイツに支配されたポーラン国内の村で、網の目のようにはりめぐされた地下水道の作業者・ソハが、街のユダヤ人家族たちを地下道の奥底に隠すという映画でした。ユダヤ人を密告したものには、報奨金が支給されるイタリアもポーランドもフランスも、ドイツに侵略された国で、そこに住んでいるユダヤ系 市民もまたドイツ軍に支配迫害されていました。そんな中で、いずれもユダヤ人を匿うことで自分の命の危険さえ冒してユダヤ人を保護するストーリです。


ドイツ軍に媚を売り、地位や身分や命の安全を求めるもの、お金に目がくらんでユダヤ人を密告するもの、ナチズムの占領支配の戦争の最中ゆえ、人間の「善と悪」がハッキリ見える映画です。再び、人間を「善」と「悪」に分けるものは何なのだろうか…ナ、という難問が待ち構えています。それを単純に「倫理」と「宗教」の答えで解決してしまっては、社会科学などあってなきものだろうーネ。少なくても、Ⅿ・ウェーバーは、ナチズムの軍隊に対して「形式的合理」と「官僚制」という答えを出しているが、これは市民社会には当てはまらないだろうーナ。皆さんはどう思いますか…?ハンナ・アレントは、アイヒマンをただ単なる小役人と喝破して、「悪の凡庸さ」と言った。人間の「脳」は恐竜から進化したホモサピエンスの筈だが、ただ「脳」はその残酷と獰猛さを体内に残していたのかーナ?