◆最大公約数の「ニーズ・ウォンツ・シーズ」に応えることが、ままならない時代に… | 児玉千恵子@連絡簿

児玉千恵子@連絡簿

わが国に「既製服のフィッター」を誕生させたパイオニアとして知られ
VMD改善実地指導で売れるCS空間を創る「売場の庭師」とも呼ばれている
児玉千恵子が書き下ろす公式ブログ

(C) DOMINANT LIMITED 「和」食を広めるのにひと役買っている、和の食器を訴求しているウィンドウ(ニューヨーク)

 昨年末の銀座でのことだが、打ち合わせ後の夕方ホテルに戻ると、フロントではない1Fのエレベーター前に、「安室奈美恵」さんに似た美女が誰かを待っていた。…声をかけると、今から「ご同伴」するお客さまをお待ちしているとのことだった(リーマンショック後は、タクシーを節約してクラブへ自転車で出勤する女性もいたが…)。
 また偶然乗り合わせた個人タクシーの運転手に、「タクシーの景気は、いかが?」とさりげなく聞くと、「競合ライバルは増えたけれど、久しぶりにこのところ稼がせてもらっているよッ」「都内に、新名所や行きたくなる商業施設もできたし、大型店の改装もあったせいか、外国からの観光客が増えた気がする!」と応えてくれた。
 運転歴38年という彼が、マスクをしたおばさん客(私)に、アベノミクス効果や株高、消費税アップ前の駆け込み需要…うんぬんという切り口で返さなかったのはさすが…。
 1000万人を越えた訪日外客数…に関しては、80年代の終わりから90年代にかけて、日本人がドッと欧米に観光に出向き、伝統ある著名店やブランドに押し寄せて所狭しと買い物をした出来ごとが、今のわが国(主にアジアからの富裕層のショッピング)で起きている感じがしないでもない。
 オリンピックと「和食」の話題にも後押しされて、今後さらに海外から熱い視線を浴びるだろう。
 〈MD構築とサプライズ〉
 少子高齢化が進む中、「MD構築」では従来の発想を大幅に変えていく必要があろう。
 「シルバーやマチュア層とは、こんな感じ」と…かつて描いていたイメージで迫ると、最大公約数の「ニーズ・ウォンツ・シーズ」に応えることが、ままならない時代になった。
 以下に、ケーススタディの一例を記述させていただく。…60年代のグループサウンドをリードしていた「ザ・タイガース」(6人のメンバー)が、昨年“44年ぶり”に再結成され、最終公演(東京ドームにて)の番組を観たが、会場に足を運ばれた方々の「熱気」と「異次元のような音響空間」は想定以上にエネルギッシュだった。
 楽器も上手にこなして、唄も歌えるメンバーが揃っているから、観客も総立ちになっていた。
 観客の多くは、若い頃メンバーを追いかけていたファンだろう。だから彼らと同世代が大勢を占めていた(親子連れもチラホラ…と)。
 私的にはあまり興味のなかったグループだったが、若い頃より熟成された、深みのある彼らのパワフルな歌声と演奏に、「やっぱり…タイガースはすごい!」と感じた(わが国の、ビートルズではないかと思ってしまったほどに)。
 ジュリー(沢田研二)は、体形(型)が「ふくよか」になってはいたが、声の張りと伸びは健在だった。
 車椅子(闘病中)の岸部シローを除いて、他のメンバーは若い頃の面影を残しつつ、ダンディに歳を重ねていた。…スタンドカラーのステージ衣装(黒と白の2タイプ)や、オリジナルTシャツも、全員が似合っていて、若者も顔負けするほどだ。
 他にも似通った事例がある。四国の松山出身の歌手で作詞・作曲家の「レーモンド松屋」さんのライブでも、総立ちになってリズムに乗っている方々の大半が、団塊世代もしくはそれ以上が圧倒的に多かった。
 今後は、こういった現状を、「どのように分析してMDを組むか?」がニッチ市場への鍵となろう。
 某百貨店が、50代のカップルをターゲットにした「PBブランド」を発足させた。狙い所はいいと思うので成功して欲しい。
 「感性年齢」のマーケットは加速している。「ノンエイジ」と「各人各様のライフスタイル」とを、いかにマッチングさせるか? が早急課題か。
 好奇心を旺盛にすると、お客さまの「手伝い人(びと)」としての腕が冴え渡る!
〔PHOTO:DOMINANT LIMITED 〕
「ストアーズレポート」 3月号より
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