イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

オリーブ

2005-05-21 11:36:57 | いにしえの話
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 日本人にとって万能薬であり、郷愁の木の実といえば梅。地中海世界の梅はオリーブ。オリーブなくして、地中海世界の歴史は語れないといっても過言ではない。
 バルでのつまみは、オリーブが一番。ぷっくりとしたみどりのオリーブをまず注文する。カウンターではそれだけで「オ!通だね!」と話し掛けられ、常連の人たちとの会話の糸口となる。オリーブの旨いバルは会話も旨い。(スペインでは、まずい食べ物に当る事のほうが難しい)
 
私を象徴する木は、泰山木とアカシヤとオリーブ。泰山木の大木のある家に生まれた。真っ白い大きな花が咲き、香しいかおりが家を包んでいた。そして、私の誕生記念で植えられたバラの脇に、鳥が種を落としていったアカシヤが芽を出した。たくさんの芽が出てくる裏庭で、私はこの小さな苗を小石で囲い、草むしりのときに抜かれてしまわないよう気をつけていた。そして、鉢植えにして今でも大事にしている。当時オリーブの木を日本で見ようとしたら、小豆島ぐらいでしかなかったと思う。オリーブの種を、鳥が運んでくるのを未だに夢見ているが、あるのは漬物オリーブの種ばかりである。
 
 地中海世界で発掘していると必ず出てくるのはオリーブの種である。紀元前2千年のオリーブの種は、掘りおこされると、スミレ色である。それはまるで古代の雨粒が結晶になって、残っているようである。青い空の化石。(古代オリエント博物館所蔵・サンシャインシティー内) 
古代ギリシャ、ローマ、キリスト教、イスラーム教…地中海世界文化圏で、オリーブは重要な意味を持ち、また象徴である。油が取れることから、火を生む。古代世界において火はとても神聖なものと考えられていた。光の元となる火を生み出すオリーブ。イスラームではオリーブを、世界の中軸をなす木と考え聖なる木と考えられている。
 地中海世界の宗教画の多くに見られる「生命の木」のモチーフ。この葉はオリーブだろうなと思えるものがたくさんある。
 桃栗3年柿8年というが、オリーブが実をつけるのは、苗木になってから10年から15年もかかる。植えてもすぐ収穫が出来ないため、農家は地代が払えない。このことから、土地所有に関する契約が生まれたり、また収穫ができるようになると、労働者に対する問題が出てきた。オリーブは手がかからない。収穫の時期だけ大量の労働力を必要とする。そのため、まるで古代エジプトの神殿建築の労働体制のようなシステムが引かれた。古代エジプトでは農閑期に、神殿やピラミッドを建て、人民が餓えないようにしていた。オリーブ栽培地域では収穫期以外、人々は石工となり、岩場を切り開いてオリーブ農園の建築工事を担うようになった。
 
 「毎日大さじいっぱいのオリーブオイルが健康の秘訣」とはイタリアのマンマの言葉だったか?バルに立ち寄りながらの酔いどれ散歩旅。長生きの極意がここにあるかもしれない。

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