もえるゴルフボールあそび | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

 

ところで、この海の草原の南の道は土のみちで、そのみちの真ん中とちゅうは、北から来た舗装道路が垂直に近づいています。
でも、この道路は南の道に届く前に、袋小路(ふくろこうじ)になって止まるのです。
 

その袋は、車が方向を変えやすいよう、丁の字型にひろげられていました。
この丁字のアスファルトの上で、わたしは道すがらに拾ったゴルフボールをつきました。
(草原の奥には小さなゴルフ場があるので、そこからころがってくるのかもしれません)
ピチ! ピチ! ピチ!

硬いアスファルトにぶつかるたび、ボールはするどい音で空気にひびをいれます。

 

さあ、ピピはわたしが持っているボールが欲しくてたまりませんよ。
ボールが空中で描く線の中に、いきなりジャンプで割りこんできます。
わたしは

パシリ!

と片手でボールをつかみ、ピピの目を
キッ!!
と見すえます。
「いくよーー」

 

ピピは
さっ!! 
とわたしから離れ、いそいで二十メートルくらい先まで走って

くるっ!!

ふりむきつつ止まると、四つ足をふんばって体を低め
キキッ!!! 
と身構えます。 
わたしはボールを放ります! 

 

じゃらじゃらっ!!(爪の音)
ピピ、走ります!!

 

・・・・フフ。

これは、フェイントです。


ボールはまだ、わたしの右手の中にあるのです。

「あっ・・!」

 という顔をするピピに、わたしはすかさずまた投げるフリ!
ピピ走るじゃらじゃらっ!!
わたし、またフリッ!!

 

ここまでくると、ピピはもうすっかり用心ぶかくなり、ほとんど走り出しません。
ここでわたし、本当にボールをはなーつ!!!!

 

百五十メートルもある道路を、ボールは
てええええええええええっ!!
ころがりながら突っ走ります。
追ってピピも  
てええええええええっ!!!
これは、ピピにとって、たいへん燃えるあそびなのです。

 

 

 でも、ある日、私が投げたボールが道路のでこぼこでへんに跳ね、口を開けて横くわえしようとしていたピピのほっぺたに、まともに当たってしまったのです。
がつん!!!!
 

・・「がつん」なんて、漫画か文章の世界のことだと思っていた音が、ほんとうに響いたのです。


「ちょ!ちょんちゃん!! だいじょうぶかい!?」
 わたしはあわてて駆けより、ピピの顔をたしかめました。
でも、ピピは悲鳴もあげず、うなりもせず泣きもせず、ただ静かに平気な顔をしているのでした。