慎重な犬 | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

 さて、この部屋には電気ストーブがありますが、今、スイッチは切ってありました。
こいぬの頃、ピピは一直線にこのストーブの前に行って「席」を占めたものです。
でも、今日のストーブは温かくないことがわかり、ピピはそこに座るのはやめたようでした。

それで、ピピがどうしたかというと、くるりと振り向いて、わたしのベッドへ鼻先を向けたのです。

 

ベッドには、わたしが買ったばかりのミルクティーいろの毛布が、ふかふかと厚い羽ぶとんの上にのっていました。
毎晩ふとんをかけて眠るピピ、こいぬの頃この部屋で寝ていたピピは、これがわたしの寝床だとわかっています。

それに、毛布のウールの羊のにおいや、羽ぶとんの鳥のにおいは、人間にはわからないけれど犬にはわかるのかもしれません。
だとしたら、この毛布やふとんは、ピピにはとても魅力的に映るのでしょうか・・

 

以前、ピピが無遠慮にも勢いよくわたしのベッドに飛び乗り、ニカニカ笑顔で
「ぱふっ!!」
 と豪快に寝ころんで見せたとき、わたしはわざと大げさに怒りくるってみせました。

そして、力ずくでピピをベッドから降ろしたのです。
その「きびしい」記憶があるせいか、今のピピは、慎重です・・・

 

まず、ピピはベッドに鼻を近づけ、そうっとにおいを嗅ぎました。
それから
(べつに、なんの理由もつもりもないし、ほんとうになんでもないんだけど、なぜだか、どうしてだか)
・・長くなりましたが、つまり
「ふと」
 というかんじで、ふとんのはじっこに、静かにあごを乗せました。

 

そして、前足を一本、そっとのせました。
もういっぽん、また、しずかにのせました。

こんなことを、ひとつひとつ静かにすすめていくあいだ、ピピの背中にぴんとアンテナが立ち、わたしの反応を注意深くうかがっているのがわかります。
もし、わたしが怒ったら、ピピはすぐさまこのベッド上陸作戦を中止して、ただちに撤収(てっしゅう)するつもりなのです。