チリチリとガヤガヤの後に | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

 そして、時は今、春の三月。

とある晩のことです。
わたしたちは、竹林の手前にある「古墳」台地の公園を降り、福祉センターの駐車場にやってきたところでした。

まだ新しくなめらかなアスファルトを、ピピが急ぎ足で歩きます。
すると、ピピのたくさんの爪が
「ちりちりちりちり ちりちりちりちり」
 ちいさな楽器をつまびくように、響きます。

やがて、駐車場にも、東の竹林にも、そのまた奥の山にも、おおきなくろい夜の幕が
(じわり・・・・)
 と降りました。
すると、とつぜん、遠い東の山のその向こうで、なにかが
「がやがや がやがや」
 と、騒ぎだしたのです。

いいえ、「がやがや」と書きましたが、それはほんとうは、まったく音はしないのです。

 

音をたてない、なにかおおぜいのものたちが、山の裏側で、ふしぎなおおきな祭りを始めた。

「いったい、なにをおおさわぎしているのだろう・・・・」

 わたしは驚きながら、じっとそのあたりを見つめました。

すると、くろい山の輪郭に、光の糸が
「きらり」
 と走りました。
その白い光の糸は、やがて鋭いナイフになり、巨大なコップのかけらになり、そして、すべてが現れました。

 

そうです。

おおきな輝く満月が、長い、ながい衣の裾をひき、女王のように傲然と、くろい地上に立ちあがったのです。