*Dinner at "PATINA"*
ご無沙汰致しております。
1月はとうとう一度も更新しないまま過ぎてしまいました。
皆様、お元気でいらっしゃいますか?
夫も私も元気そのものです。
まあ、二人共多少目方が増え、元に戻そうと一応の努力はしているものの思うように減らない…というのも、毎年のこと。
こんな調子で。
今年も、ポツポツと気儘に更新して行くことと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
<(_ _)>
さて、先月の30日はLAフィルのコンサートに行ってきました。
会場はディズニーコンサートホールですので、そこに隣接するフレンチレストラン、「PATINA」でまた夕食をいただきました。
開演は8時、レストランの予約は6時でちょっとギリギリだったので3品のコースを選びましたが、これにアミューズが2品つきます。
一品目は和風でした。
*Crème Fraîche and Salmon Raw on Fried Nori Seaweed
海苔に軽い衣をつけて揚げたものに、クレームフレーシュ(軽めのサワークリームですよね?)とイクラを乗せたもの。
海苔とクリームの相性のよさにびっくり!…家でも真似してみたいと思いました。
二品目のバターナッツスクウォッシュスープのカプチーノ仕立ては、ぐいのみに入って来ました。
*Butternut Squash Soup
こっくりとほの甘くて、「もう一口欲しいなぁ」と思わせるあたり、アミューズの役割を上手くこなしていました。
ワインはスペイン産の赤とブルゴーニュの白をグラスで一杯ずつもらい、料理に合わせて夫と交換しながら飲みました。
本当なら両方一杯ずつ飲みたいところですが、そんなことをしたら私はコンサート中に大イビキを、夫は赤恥をかくことになってしまいますのでね…。
夫の前菜の「フローズン・フォアグラ」です。
*Frozen Foie Gras with Quince, Parmesan, Port and Hazelnut
「フォアグラを凍らせる?!何てことを!?」…と一瞬憤慨しかけましたが、なるほど、凍らせたフォアグラを薄く削ってあるのでした。
ふわりと積もったフォアグラの下にはマルメロのコンポートとポルト酒のソース、パルメザンチーズ、ヘイゼルナッツが隠れていました。
二口程味見させてもらいましたが、このマルメロが、はんなりと甘くて、微かに花の香りがして、とてもおいしかったのです。
これがマルメロの香りなのね…としみじみ味わっていたら、小池真理子氏の小説「恋」を思い出しました。
直木賞受賞作で、二年ほど前にドラマにもなったのでご存知の方も多いでしょうか。
今までマルメロに実際触れる機会がなかったので、私にとってこの本は今まで「角煮を食べる時に読む本」だったのですが、この物語を彩るのにふさわしいのは、もちろん角煮ではなくマルメロの香りです。
おっと、今回取り上げたい本は「恋」ではありませんので。
閑話休題。
薄いフォアグラは舌の上でほろりとほどけて、おいしかったのですが…。
私はフォアグラは厚切りでも全然かまわないな…と思ったりしました^^。
私の前菜は「タルタルステーキ、牡蠣の燻製とウズラの卵、トランペットマッシュルーム添え」。
*Beef Tartar with Smoked Oyster, Quail Egg and Trumpet Mushroom
タルタルステーキというと、最近はマグロを使うお店が多いのが個人的にとても残念なんです。
なので、メニューに牛肉のタルタルを見つけると、迷わず注文してしまいます。
「トランペット・マッシュルーム」というのはどうやらエリンギのことらしく、輪切りになっている白いのがそうです(もう一種、丸くて薄いのはプレーンなあられのようなチップスでした)。
牡蠣は殆ど生で味が濃く、お約束のケイパーとウズラの卵をまぶしながら食べる久しぶりの生の牛肉に、とても満足しました。
さて、メインは夫はひな鳩のローストを。
*Squab with Huckleberry Sauce, Chicken Liver Mousse, Burdock and Chocolate
これも二口程もらいましたが、ぷっくりと弾力があって、かつ柔らかいお肉にハックルベリーとチョコレートの甘酸っぱいソースがよくあっていました。
ゴボウが添えられていたのが(写真の黄色っぽいひらひらです)珍しかったです。
こちらが私のメイン。
*Venison with Pear, Persimmon, Brussels Sprout and Walnut Miso
ヴェニスン、鹿肉です。
シカを食べるのはこれが人生で3、4度目くらいだと思いますが、鹿肉にナイフを入れる時、私は必ず、ある物語を思い出すのです。
それは…子供の頃に読んだシャルル・ペローの童話。
「眠り姫」なのです。
ある国の美しいお姫様が、魔女の呪いによって16歳の誕生日に「つむ」に刺されて眠りにつきますが、100年後、やって来た王子によって目覚め、二人は結婚してめでたし、めでたし…。
という、このおとぎ話のどこにシカのお肉が?とお思いになる方が多いと思います。
が。
この物語にはまだ続きがありまして。
実は、王子の母親は。
人食い鬼の一族の出身だった!というのです(王子の父王は、どうも財産目当てで結婚したらしい)。
王子はこの母親が、自分の妻やその頃生まれていた二人の子供に害をなすのではないかと、自分が結婚したことを隠していました。
しかし4年後、父王が亡くなり王位を継いだのを機に、王子は姫と子供達(女の子のオーロール、男の子のジュール)を正式に城に迎えました。
この新しい王がやがて戦に出掛けて城を留守にすると。
王の母親の王太后は、料理長に命令します。
「今日の夕食にはかわいいオーロールを、玉ねぎとマスタードのソースで食べたいよ」
人食い鬼には逆らえず、かといって4歳の愛らしいオーロール姫を殺すことも出来なかった料理長は、姫を自分の家にかくまい、代わりに仔羊を料理して王太后を騙します。
同様にジュール王子の代わりには仔山羊を、そして。
ついにお妃(眠り姫)の番になった時。
料理長が「どんなに美しく色白ではあっても、20歳を過ぎて少しかたくなっているお妃様と同じだけかたい獣の肉は…?」と悩み、考えあぐねた末に料理して出したのが。
「若い雌鹿の肉」だったのです。
この料理を平らげた後、ナプキンで口元を押さえながら満足気にニタリと笑っている王太后の挿絵が、今も強烈にまぶたに焼き付いています。
(ちなみにこの後の物語は、料理長の家に隠れていたお妃と子供達が王太后に見つかってしまい、あわや処刑、というところで王が戦から戻って来て、人食い王太后は自ら命を絶って、めでたし、めでたし…という結末になっています。)
この童話を読んで以来、動物園などでシカを見ると必ず「これが眠り姫と同じ肉質の…」と思うようになってしまいました。
今回私が食べたお肉の雌雄は分かりませんが…。
レアに焼かれたお肉はきめが細かくモッチリとした感触で、色からも分かると思いますがゲーム臭というのか、微かにですが血と土を思わせる香りがありました。
でもくるみのペーストと赤味噌を使ったソースがその香りを抱き込んで、添えられた柿や小蕪、芽キャベツの甘さも程よくて、おいしく食べやすい一皿に仕上がっていたと思います。
昔は貴族しか食べられなかったというジビエ。
血の香りは高貴な眠り姫の香りと言えるのでしょうか…?
デザートです。
夫の「チョコレート」のプレート。
*Chocolate Mousse with Pecans, Bourbon and Buttermilk
パリパリのカラメルの筒の中はキャラメル風味のチョコレートのムースでした。
一口もらいましたが、メニューが変わる前にもう一度来て味わいたい!と思うくらいおいしかったです。
両端に添えてあるベージュ色のクッキーのようなものは、食べてみたら「カルメ焼き」。
ぽくぽくしていて香ばしくて、夫も大喜びしていました。
私のチョイス、「レモン」です。
*Lemon Curd with Pie Crust Flakes, Meringue and Lemon Ice Cream
固めのレモンカードの上にパイクラストとメレンゲのかけらを散らし、レモンアイスクリームが添えてありました。
私は前菜もメインもどっしりした料理を選んでしまったので、レモンの酸味と爽やかさがおいしかったです。
ディカフ(カフェイン抜き)のコーヒーを飲みながら、これもこのレストランの楽しみの一つ、プティフールを。
*Petits Fours (pâte de fruit, Chocolate and financier)
パート・ド・フリュイもレモン味でした。
この後のコンサートが、チャイコフスキーの「スリーピング・ビューティー」ならよかったのですけど。
演目はベートーベンのピアノ協奏曲第1番ハ長調と。
*Beethoven's Piano Concerto No. 1 in C major
マーラーの交響曲第1番ニ長調でした。
*Mahler's Symphony No. 1 in D major
ワインを我慢して正解。
堪能しました。
マーラーの交響曲第1番ニ長調は、「巨人」という標題でも有名ですが、これはマーラーの愛読書だったジャン・パウルの小説「巨人(Titan)」に由来するのだそう。
でも、鹿肉のお料理に「眠り姫」と名前をつけたりしたら、それはやはり悪趣味というものですよねぇ。^^;
明日の4日から、2泊で夫とラスベガスに遊びに行ってきます。
ずっと行きたいと思っていたフレンチレストランに予約を入れたのでこれも楽しみ。
そのリポートを、今度はあまり時間を空けずにアップ出来るといいのですが、ね。
では、また。
きっと近いうちに。
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