前回の続きです。


この事業所はできて1年半近くたっていたが就職の実績はまだ1件もない状態が続いていた。そんな中でこの事業所ができた当初から来ていた利用者は2年の期限が近付いていた。事故で身体障害になっていた呉さんという女性がいた。この女性は私より4歳年上で面倒見のよいしっかり者だった。

 

ここは職安とも連携してこの呉さんの就職に向けて事業所を挙げてバックアップすることに決まっていた。職安にも障害者専用の窓口があって親身になって応対してくれる。

 

この頃、年末が繁忙期になるパン屋さんから求人が出ることになった。このパン屋さんは小さい会社ながら近畿一円にパンを卸していて本社は大きな工場になっているらしい。

 

この事業所にはジョブコーチはいなかったが、副施設長の谷さんが職業指導員だったので職安と折衝したり面接にも同行したりするなど手厚い支援を行っていた。

 

このパン屋さんは繁忙期で人手不足だったので職安とのやり取りや面接の日程の調整などはスムーズに進んだ。事業所側も呉さんがまじめに通所して就労にも耐えうると判断したので呉さん本人も就職したいという意向は強くこのパン屋さんの面接を受けることに決まった。面接では当然スーツを着ることになるので着替えている様子をみんな目撃することになるが呉さんが面接に行くことはみんな知っていたので何も言われなかった。

 

面接は終始穏やかな調子で進んだらしい。会社側も障害者を雇用すれば2.0/100のの障害者雇用の義務を満たすことになり、多く雇用した場合は補助金が国からもらえる。この面接ですぐに採用したいということに決まった。こうしてこの事業所最初の就職は呉さんに決まった。

 

繁忙期なのですぐにでも来てほしいということになり、呉さんは正式にこの事業所を卒業することに決まった。志半ばで退所する人は少なくなかったが就職決定による卒業者が出たことで他の利用者さんにとってもいい刺激になっていた。

 

またもう1人少し吃音がある松本さんの就職あっせんも同時進行で進んでいたが、こちらはあまりいい返事はもらえなかったようである。

 

この事業所では就労時の支援だけではなく就職後定期的に連絡を取るなどの定着支援も行っている。いつでも遊びに来てもいいよと呉さんには声がかけられていた。

 

この呉さんは就職して1年近くになるが現在も元気に働いている。

 

 

話は次回に続きます。

 

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