ニキビ発症のメカニズム、CAMPファクターについて その2 | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

通常の毛穴はある程度開いており、嫌気性の環境とはなりません。

毛穴は深い真皮の部分では太いのですが、出口の表皮の部分が、歯磨きのチューブのように細くなっています。なぜこのような形をとるかというと、広すぎるとブドウ球菌などの病原菌が侵入しやすくなる、微妙な皮脂分泌の調整ができなくなるからでしょう。毛穴の出口の周囲の表皮細胞や角質細胞がストレスや過剰な脂質・糖質を含んだ食事などで増殖すると、毛穴は閉鎖され、嫌気性の環境となります。

 

臨床的にはこの状態を「コメド」といいます。

コメドとは俗にいう毛穴に黒い皮脂が詰まった状態ではなく、ニキビの始まりの段階を指します。毛穴が少し膨らんで、常色か、やや赤みがある状態です。


 

上の写真 矢印の先の小さく白く盛り上がっているのがコメドです。

その上にもたくさんあります。

 

出口が詰まった毛穴に抗生物質を外用してもなかなか菌に到達することはできません。抗生物質を内服しても何パーセントの成分が毛穴に到達して、何割のアクネ菌を低下させるかという報告もまだないのです。生体外の培養皿でアクネ菌を殺す抗生物質を使用してもそれがアクネ菌を毛穴から一掃できるという確証はまだないのが実情です。このように抗生物質がなかなか毛穴に到達しにくいということが、ニキビがなかなか治らない原因の一つです。毛穴がアクネ菌の生育に非常に適した場所であるというのも、抗生物質だけでニキビが治らない原因のひとつかもしれません。アクネ菌はバイオフィルムという膜を作り、抗生物質が浸透するのを防ぐことも判明しています。好中球やマクロファージなどの免疫担当細胞は活性酸素や蛋白分解酵素を放出して、アクネ菌を酸化、変性させて、死滅させようとします。

ところがアクネ菌はRoxPという活性酸素を無毒化する酵素を放出して免疫担当細胞からの攻撃を逃れることができる非常にタフな細菌なのです。

 

アクネ菌は皮膚の共生菌で皮膚を弱酸性に保ち、潤いを与えるので、一掃してはまずいという考えもあると思います。でも生まれたばかりの赤ちゃんや思春期前の子どもにはアクネ菌はほとんどいないのです。それにもかかわらず、皮膚が乾燥する、顔におできができるという話は聞きません。膿痂疹などの黄色ブドウ球菌による感染症は皮膚にアクネ菌がいないのではなく、子どもの免疫機構が未熟だからできるといわれています。