こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生はあっという間だな、あと少しの間どうやって生きよう

たまには病理診断の話を・・・食物残渣(しょくもつざんさ)

2017年05月17日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

いつもは病理診断の意義だの、病理のあり方、なんていう話をいつもしているが、たまには病理医らしく病理診断のことを。

といっても今日は余談の様なお話。

ある方の消化管組織の一部に、こんなものがあった。

うーん、なんだろう。

病理医は、これが何なのか、考える。

まず、人間(この場合、消化管由来)の組織ではなさそうだ。

なぜなら、人間では見ない構造だから。

〇〇だから人間のものではない、というのは難しい。

病理診断は人間にあるものか、ないものか、ということが重要だ。

では? 

消化管の中から出てきたものだから、食物だろう。

無機物ではない。

食物ということは、消化されずに残った食物残渣。

肉眼的にはゴマ粒に見えたと、切り出しを担当した先生は言っていた。

内側には細胞壁のような構造が見られる。

植物、おそらく何かの種だろう。

それとも何かの茎の断面の可能性もあるが、内部構造が不明というか空洞になっているので違うだろう。

ということで、こういったことに詳しい知り合いの病理医に相談する。コンサルテーションだ。

残念ながら、その先生も見たことがないという。

パラフィンブロックからDNAを抽出して調べれば、これが何なのかわかるだろうけど、食中毒の患者さんではない、この種(らしきもの)がなんであっても主診断に影響を与えることはない。

こういうもの一粒に対しても調べるのが病理医の仕事だが、今回は、予後に影響を及ぼすことはないだろうと判断して、

「一部に種子様の組織が含まれています。」

と記載するにとどめ、報告書を完成させた。

喧々諤々でした

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。