こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生あっという間、私の時間もあと少し。
よりよく生きるにはどうしたらいい?

病理解剖で思うこと(1/10)死者の人生1

2016年04月05日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

病理解剖を行う前に、病理医はこれから解剖を行う亡くなった患者さんの臨床経過に関する情報を担当医から得る。それは、臨床経過記載用紙であったり、ディスカッションであったりする。

担当医からは年齢、性別にはじまり、これまでの主な病歴などを聞くのだが、臨床経過において重要なのが職業歴だ。いわゆる職業病と言われる病気があり、有機溶剤を扱ったり、粉塵を吸入したりすることの多い職業の人に、特定の部位に悪性腫瘍が発生する。昔、といっても昭和時代だが、それらの疾患は乱暴にも”職業病”などとして、『その仕事をしていたら、かかっても仕方ないもの』として片付けられていたが、疫学的にその頻度が高い職業が明らかになったことで、労働環境工場の観点から問題とされるようになった。私は、典型的な職業病で亡くなられた方の病理解剖をしたことはないが、全身刺青をした人で肝炎、肝細胞癌で亡くなった方の解剖をしたことがある。かつては刺青の刃を消毒せずに使っていたので、これを介して肝炎ウイルスに感染したのだ。その方の人生をかいま見た気がした。

先日、国立がん研究センターと大阪大学の共同研究で、「離婚したり、連れ合いと死別した人は、そうでない人に比べて脳卒中による死亡の頻度が高い」という研究結果が発表された。こうしたことによる様々なストレスが発症に関わっているということなのだろう。ただ、もし突然の脳卒中ということで、病理解剖することになったとき、病理医にその患者さんの離婚歴、連れ合いとの死別歴まで知らせてもらえるだろうか。脳卒中の原因にしても、ストレスによる心機能異常によるものから、血管がしまってしまうもの、高血圧によるものなど様々だ。どれなら、ストレス性、どれなら体質性そしてどれなら先天性、というようなことは、まだまだわかっていない。そういったことをコツコツと集積していくことが医療に貢献することで、最終的にはそれぞれの人が幸せに生きていくことにつながっていく。

病理解剖を行うときには、亡くなった方の来し方を詳細に聞いてから始める必要があるのだが、残念ながらどこまで確認したらいいのかまだよくわからない。

 連日花曇り

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

 

離婚・配偶者と死別 脳卒中リスク26%高くなる

NHKニュース 4月4日 17時05分

離婚したり、配偶者と死別したりした人は、そうではない既婚者に比べて、脳卒中になるリスクが26%高くなるという研究成果を国立がん研究センターなどのグループが発表しました。

この研究を行ったのは、国立がん研究センターと大阪大学などのグループです。
グループでは、岩手県や長野県など8つの県に住む45歳から74歳までの男女5万人近くをおよそ15年間追跡し、離婚したり、配偶者と死別したりすることと脳卒中になるリスクとの関係を調べました。
その結果、離婚したり、配偶者と死別したりした人はそうではない既婚者に比べ、男女ともに脳卒中になるリスクが26%高くなり、脳卒中の中でも脳出血やくも膜下出血になるリスクは男性で48%、女性で35%高くなっていました。
また女性で無職の人が離婚したり、死別したりした場合職を持つ既婚の女性と比べ、脳卒中になるリスクが3倍近く高くなっていました。
さらに離婚したり、配偶者と死別したりした人が子どもと同居している場合、同居していない既婚者に比べ、脳卒中になるリスクが、男性で44%、女性で45%高くなっていました。
グループでは、離婚や死別を経験したことで飲酒の量が増えたり、ストレスが高まったりして、脳卒中のリスクを高めた可能性があるほか、親の役目を担っていることや経済的に難しい状況にあることもリスクを高めた可能性があるとしています。
研究を行った大阪大学の本庄かおり特任准教授は、「配偶者をなくした人が生活習慣の変化や精神的なストレスにさらされていないか気を付けて周囲の人たちも支援することが必要だと思う」と話しています。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。