こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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病理診断のワクワクする未来

2017年05月13日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

先日、職場での昼食どき。たまたま、シニアクラスのスタッフだけになった時があり、最近、若手病理医が増えてきたという話になった。医者不足ということで、医者の総数を1割増やしたのだから病理医もそのおこぼれに預かってしかるべきだろう。何でもかんでも人が多ければ多いほどいいなんてことはないのだけど、これまで病理医の数は少なすぎた。

スタッフの一人に40代半ばの先生がいる。その先生の頃など、本当に病理医がいなくなってしまうのでは無いかと危惧されるほど、専門医受験者数が減ったそうだ。で、その先生曰く、遺伝子診断の時代がきて病理医は不要になる、とか、形態学的な診断手法は廃れる、とか考えて病理医の将来に不安を感じた人も少なくなかったらしい。世代によって、それもほんの少しで、考え方は変わるもので、それより10年ほど先に病理医になっていた私なんかは、形態学を基盤とした、すなわち形態学はあって当たり前の分子病理学の時代が来るとワクワクしていたのとは大違いだ。

この前の、病理学会総会でもAI全盛期を前にしてうろたえたような論調があったけど、それは病理診断を、パターン認識だけで捉える作業だと考えている病理医の言だ。機械が診断を補助してくれたら、診断の適否に病理医が不安を感じることはずっと減る。特にパターン認識がメインとなる癌の診断に、その威力は莫大だ。将来は癌診断を目的とする生検診断の95%以上は機械が見つけてくれるようになるだろう。

小さく潰れたような消化管生検の診断とか、リンパ腫の免疫染色パネル(一覧)の判断など、まずは機械にやってもらい、遺伝子診断も組み合わせたら鬼に金棒だ。病理医の仕事はそういった、あやふやだったり客観的な診断アルゴリズムが確立している作業を行うことではない。"それらの先にあること"、それを求めていくことが病理医の仕事だ。 他の診療科と違い、診断技術の進歩、時代の変化とともに、仕事内容、問題点がどんどん変化していくということこそ、病理診断の醍醐味であり、ワクワクする未来だ。 こういう、いろんなものが詰まっている病理診断学、ひいては病理学を志す若い人が増えてくれると嬉しい。 そこはたくさんの可能性を秘めた、まだまだ未開の分野だからだ。

  一人は大変

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