死への責任。 | 堀江昭佳オフィシャルブログ「『こころ』と『からだ』の悩みを解決する しあわせ女子のための処方箋」Powered by Ameba

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婦人科漢方専門・子宝のスペシャリスト 堀江昭佳が、西洋医学、漢方、心理学の3つの視点から、こころとからだの悩みを解決する方法をつづります。
「からだを整えるとこころが整い、結果的に夢が叶う」
そんな考え方を大切にしています。


「父が
救急車を呼ぶなというので、

呼びませんでした。





そして、父は亡くなりました。

20年間、

ずっと罪滅ぼしの人生だったような気がします。」






最初、Tさんのお話に耳を疑った。





ぼくは、何も言えずにTさんの目を見て

話を聞いていた。





「父は医者でした。

少しくたびれてるような気はしたけど、

倒れる前の日まで元気で、

病院に通っていて。





その日の早朝、

部屋で父が吐いていたんです。

家には母と二人しかいなくて、

どうしていいかわからず、

119番しようとする私に



『電話をするな!救急車を呼ぶな!』




と父に何度も強く言われて。

電話できませんでした。







苦しんでいる父を見ながら、

なにも出来なくて・・・





『背中をさすってくれ』



言われるままに、背中をさすりました。

汗をたくさんかいてて、

最後、何も言わなくなった父が

じっと私を見ながら。

うれいを含んだような、

その目が、






『騒ぐな。

もう静かにしたい』








そう言っていて。






後から考えると



『もう、終わりだよ』



そう言っていたようにも感じました。





職場から兄が駆けつけた時には、

もう意識がなくて、

私たちで人工呼吸をして、

そして、救急車を呼んで・・・






20歳の時のこのできごとが

ずっと尾をひいていた。



そう、思います。







お葬式の時も、

法事の時も、

機会があると、

親戚やまわりの人に言われました。






「亡くなるには早かったよね」

「まだ、元気に仕事できたかも」

「あの時、家にいたのが女だけじゃなかったら」









そんな言葉を聞くのがつらくて。

まわりから責められていたような気がして。







救急車を呼ばなかったことが、

本当によかったのか。







わたしのせいで、父を亡くしてしまった。






父の命を断ってしまった。





わたしのせいで亡くしてしまった。





人を殺してしまった罪人のように、

自分を感じていました。




ずっと、こころのすみに

そんな思いが消えなかったんです。








でも去年、

偶然この場所で、

ある方に会って
言われたんです。




『言葉だけを信じる人が多いけど、

感じ取れる人がすごいんだよ。

親子だから感じ取っているのは間違いないから。







お父さんは医者だから、

自分の状況はわかってらっしゃる。







死ぬ時は、

みんなやりたかったことができなくて、

後悔するの。








我慢しちゃったな。


勇気がなかったな。









そんなふうに後悔するの。


人生を謳歌することも大切だけど、

死に方という、

お父さんの最後の願いを叶えてあげられて、

あなたは、いいことをしたんだよ。







お医者さまで、

たくさんの方の死に際を見てきたからこそ、

選んだんだよ。

これからは、そんな時代になる。

それを先取りしたと思っていいんだよ』









その方に、そう言われて、

やさしく包み込むような雰囲気で、

そう言われて。


本当に一気に見方ががらっと変わったんです。






いままで、

ずっと罪滅ぼしの人生だった気がしてました・・・




それが






『しあわせになっていいんだな』




はじめて思うことができました。」









Tさんは、とても優しい目をした女性で。

話を終えられた時の微笑みが

とても、とても穏やかで。

去年、そのひとに言われたことで、

気持ちが解放された喜びが、

うれしさが、

ひしひしと伝わってきた。





「わたし、

父が救急車を呼ぶなって言ったことや、

その時の細かいことを親戚とかに、

全く話してなかったんです。




そんなことを話しても、

自分のために言い訳をしているような気がして。



でも、話してみてもいいかなーって、

いま思ってきました。






父が亡くなったあとに、

日記代わりの手帳が出てきたんです。

そこには、




「心臓が痛い」




と走り書きがあって。

父は、わかってたんだなぁ。

そう思うんです」















Tさんは去年、会った人の言葉で、



ずっと、



ずっと、



ずっと



心の奥底に抱えてきたことから、


やっと、気持ちが自由になれたんだ。







お父さんをおくった二十歳のTさんは、

どんな気持ちだったんだろう。

二十年間、どんな思いだったんだろう。







出会いは、不思議。

出会いは、ご縁。






去年、Tさんがここで、

ある人に出会って変わったように。








今年、ここで、

Tさんの笑顔に出会えて、

お話が聞けて、本当によかった。











Tさんの穏やかな微笑みに、

ぼくは聞いてみたくなった。










Tさん、いましあわせですか?














「しあわせです」
























※このお話は、Tさんのご了解を得て、

ご紹介させていただいています。