私の母親は福岡県の生まれである。
とは言え、10代の頃に宮崎に、そして20代前半で大阪に来たので、大阪暮らしが一番長いのであるが、昔母からよく言われた事がある。
それは「あんたの大阪弁、早よーて理解出来へんわ~」である。

女子高、女子大だった私は、とにかく長電話が日課であった。
相手の女友達と時間の許す限り話したいから、まさしくマシンガンの如く言葉を発して話す。
しかも大阪人のプライドとも言える、話している最中にかむ(言葉をつまらせる事)事は許されないため、スピードを落とす事なく話すうち、年々その大阪弁の速さは増すばかりであった。
そんな娘の会話を聞き、九州出身の母親は「ワケ分からん」と思っていたに違いない。

この事から、その土地、その国の人同士で会話をするとき、人はよりその会話速度を速め、そして言葉を略す事も多い傾向にあると知っていた私であるため、今の職場の女の子達が2,3人で話し出すと、全く持って意味が分からない事も多い。

最近、私の働くお店には中国人観光客が殺到する。
英語が比較的話せる人もいれば、全く持って話せない人もいるわけで、それでも接客せなアカンのが客商売。

今日も商品を数万お買い上げになった中国人男性が「タックスリファウンド」を申し出て来た。
買った商品は5点、その1つ1つに書類を書かなければいけないため、10~15分ほどを要する。
私は研修の身であるため、まだやってはいけないから、19歳のNちゃんがやってくれる事に。

Nちゃんが何やら書類に書いていると、男性が机をこぶしで叩きながら「ハリーアップ!ハリーアップ!!」つまり、「急がんかい!」と言い出した。
「ユー!ハリーアップ!」、アナタ!急げ!と言う。
完全にキレ顔のN、「今やってます?分かりますか?あなたの申し出をやっているまでです。それとも止めますか?」と言い返した。

男性「バスが2時に出る」という意味の言葉を発した。
時計は既に2時2分。

Nは「あのね、これ今から4枚まだ書かなくちゃいけないんです。あなた2時にバスに戻らないと行けないんでしょ?どうします?このまま続けます?それとも諦めてバスに戻ります?」と聞いた。
Nの話す英語とは、スコットランド英語である。
私には何とか分かるが、果たしてこの男性は英語なら分かったものを、スコットランド人英語なら分かりにくいのかも・・と思いながらも、その様子を見守る。

男性は怒り出した。
どうやら、Nが書類を発行しないと言っていると思った様子で、「何故?」というような言葉を連呼する。

研修で新人のババア39歳、私の出番である。
ここは1つ外人同士、簡単な英語でゆっくり言えば理解してもらえるのではないか・・としゃしゃり出てみた。

私は「書類は書いてます。ちゃんと書きます。でもね、あなたはバスに乗り遅れるんじゃないですか?大丈夫ですか?今から10分ほどかかりますけど、バス・・大丈夫?」ととにかくゆっくり、そして初心者レベルで話してみた。
男性「あー大丈夫。それは大丈夫」と安心した様子。

私「待ってもらえるの?バス、行かない?大丈夫?」と聞く。
男性「ああ、大丈夫。でも急げ」と言った。
偉そうに言うんかい!!

英語圏の人間は、普段その言葉が省略なのか、地元言葉なのか、簡単なのか否かを考えずに話す。それは当たり前の話で、私だって大阪弁ならそうなるからである。
だからこそ、それを繰り返し言われても、英語が上手ではない人にとってみれば、チンプンカンプンに過ぎない。
私のように、大人になってから英語を習得し始めた身にとっては、どんな言葉と言い回しが難しく、そして簡単かを身を持って経験して来たから、この男性に通じたのである。

Nは頭の良い子だから、その辺を説明すると「なるほど・・外国人同士だからこそ理解できたのか~」と納得してくれた。
がしかし、その後も男性は「急げ」「無駄口叩かず急げ」と言いまくり、お店を出て行った。

「急げ」と英語で言うのなら、せめて「サンキュー」くらい覚えてくれたらエエのにな・・と、ちょっと思う夕方である。

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