カーライルの町にポーランド食材が売られている店がいくつかあるのであるが、その1つの二階にレストランがある。
前から気になってはいたものの、なかなか入る機会が無く、日曜日に行く事が出来た。

一緒に行った夫の兄夫婦は、入った雰囲気を嫌い「ここでは食べたくないから出よう」と言った。
その雰囲気とは、分かりやすく言うならば、大衆タイレストランにありがちな、母国の音楽が流れ、母国の国王の写真が至る所に飾られている、彼らの文化を前面に出した店内である。
店内に窓はなく暗い感じを覚えるが、しかし清潔感があるのは見てすぐに分かる。

私と夫、義母はポーランド料理に興味があったのでそのまま店内へ。
義母が兄夫婦に「嫌なら他に行けば良い。私らはここで食べるから」と言った。
不機嫌な兄夫婦も結局席に着いたが、嫁はメニューを見始め「おお!!何か思ってたイメージと違う。美味しそうなのが一杯あって困る」と言った。
義兄は結局、「ここでは飲み物1つ飲みたくない。何を食べさせられるか分からない」と言った。
典型的な保守的イギリス人である義兄に、私はヘドが出るのであった。
食べてみて決めてみれば良いものを、見慣れない異国の雰囲気の店内を受け入れられない気の毒な人である。
義兄は水だけを飲んだ。

ウエイトレスが1人いたが英語があまり話せない様子で、コーラさえも通じなかったが、中から出てきたポーランド訛りの英語が達者なシェフにお勧めを聞き、私たちはオーダーを終えた。
出てきた料理は全て美味しく、義母も「これは美味しいわ」と絶賛。
オーストラリア人の嫁も「ポーランド料理がこんなに美味しいとは知らんかった」と絶賛した。

シェフが中から出て来て私達に「イギリス人でしょ?珍しいですよ、ここに来るのは」と言った。
カーライルに住むポーランド人しか客では来ないらしい。
夫が「また来ます」と言うと、シェフは「今月で閉店です」と言った。

カーライルに住むポーランド人の客だけではお店の経営は成り立たず、やむなく閉店になると言う。
残念である。
全て手作りで新鮮、どれを食べても美味かった。
なのに万年同じメニューしか出せない英国パブの方が受け入れられる。
どこでも、そんなモンだろう。
食べ馴染みがなければ、美味いかそうでないかは関係ないのである。

6年前、トルコ人がやっているトルコ料理のお店がオープンした。
それは本当に珍しい料理ばかりであったが、しかし美味かった。
が、その店にイギリス人が大好物の「チップス」ことフライドポテトが無い事でクレームを受け、以後それを置き始めた事から、徐々にトルコ料理はイギリス料理化し、最後はハンバーガーとピザを売る店に変化した。
オーナーは「本意ではないけど、生き残るためにはそうするしかない」と言った。

知り合いのタイ料理屋もそうである。
「チップス」が無いと、イギリス人は料理を食べた気にならないのかも知れないとオーナーは笑うが、しかしそれが収入になるから、タイ料理に関係なく置かねばならない。
現にオーダーが入るから仕方ない。

国際都市で多国籍の多い例えばロンドンなどは、異国の地のレストランがあっても流行って存続できるのであろうが、ここカーライルでは難しいのかと思う。

ポーランド料理店で念願の「チーズケーキ」を食べたが、なるほど噂通りしっとり濃厚で美味しかったが、独特の風味付けがしてあり、子供はあまり食べたがらなかったが、私は美味しいと思う。
閉店までに再び行く予定である。

人気ブログランキングへ