私が初めて子供に関する仕事をしたのは、豪州の保育園だった。
当時3~4歳児のクラスにいたのであるが、子供達は皆、ランチボックスを持参して登園し、教室内の冷蔵庫に保管していた。
そん中、身体のとても小さく痩せた男の子がいたのであるが、彼の弁当だけは缶詰めのスパゲティだった。
彼の持参する缶詰を私はキッチンに行って温めるのが仕事の1つだった。
来る日も来る日も内容は変わらず、私はカルチャーショックを受けるのであった。

そうして今に至り、娘が幼稚園に通い始めたのは2歳半の事。
そこにもやはり缶詰弁当の子供はいた。
スパゲティではなく、週5日「トマトスープ」である。

先日、息子を幼稚園に送って行く際、年老いた園長先生がゴミ出しをしていた。
2週間に1度しかゴミ回収が来ないため、2週間分のゴミとリサイクル用のプラスチック、紙、缶&瓶、段ボールをそれぞれに分別したものの入った箱は相当な量と重みになる。

丁度、園長が缶&瓶の入った専用箱を両手で抱えようとしていたため、「私やります」と言い手伝った。
その時、その中の缶の9割が「トマトスープ」であったため、私は思わず「トマトスープ大好きなんですね~」と園長に言った。
園長は「それ、数人の子のランチでこの缶の量になるねんで」と言った。
そうか・・月~金までトマトスープが5回で×人数分か・・・

「そうですね、家庭の事情か親の怠慢か・・そこは分かりませんし言えませんものね・・」とゴミを見つめながら語った園長と私。
園長はゴミ箱周囲を掃除しながら「弁当箱を開ける楽しみを、1度くらいは体験させてやりたいものだけどね」と言いながら「まあ、こればっかりは私の範囲ではないから・・」と苦笑いした。
先生には色んな事情が見えるのだろう。

ありがたくも今の小学校では小学2年終了まで給食費は無料である。
これを過ぎれば弁当か有料制の給食になるが、その日が来るまで缶詰めなのか~と母として思うのである。

昔、知り合いの新地のママさんが、当時、私立小学校5年生だった息子に弁当を作る時間がないため(夜中に帰って来て朝は寝ているから)いつも行く料亭に頼んで息子さんの弁当を作ってもらい、それを持ち帰って学校に持って行かせていた話を聞いた。
重箱に綺麗過ぎる程に美しく、季節をあしらった弁当を息子さんは心底嫌がり、大人になってから「あの弁当は全て友達の弁当と交換していた」と聞いてショックだったらしい。

他のお母さんみたいにキャラ弁にしたり、可愛くしたり、メニューを工夫したりできないから息子に恥をかかせまいと思い、料亭に頼んだのだと言っていたが、同じメニューでも可愛くなくても、普通のオカン弁当で良かったんやと言う事に気づけなかったと、そのママさんが言っていたのを思い出す。

料亭の弁当はキャラ弁を越し過ぎるわな・・
しかも風呂敷はアカン・・・

店を切り盛りしながらも、部活の朝練後の弁当、昼の弁当を作っってくれた母に今頃感謝する冬の終わりである。

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