近所にリンゴの木がある。
いつの間にか誰かが植え、それが大きく立派な木に成長した。
この時期になると無数の真っ赤な林檎が実をつける。

アップルパイにしたいなーと思いながら車で横を通る事7年、しかし林檎は格安で売られているし、拾ってまで別にエエか・・せやけどもったいないな・・と思う毎年の秋なのである。

数年前、私がここを通った時、電動車椅子を最高スピードでF1レーサー顔負けのハンドルさばきで動かしながら、芝生に落ちた林檎を拾う老婆を見かけた。
以来、毎年その老婆を見る。

肘置きの両サイドにはスーパーの袋が下げてあり、そこにパンパンに林檎が入れられてある。
電動車椅子なのに、上半身を巧みに動かし、1人でよく地面の林檎が拾えるなと不思議に思ったのであるが、身が軽い人なんだろうか・・と思ってきた。

先日、近所の住人だろうか、父親らしき大人と子供がハシゴを持って来て、木になっている林檎を取っているのを目撃した。
そら、あんなに実を付けていたら取りたくもなるわな・・と思いながら横を通り過ぎた。

昨日、夫とその木の近くにあるガソリンスタンドでガソリンを入れ支払いをしていた時の事。
私が「あそこの林檎、1回は誰もが取りたいと思いますね、見事な木ですねー」と言うと、奥さんが「そうそう、昨日の夕方やん。毎年あそこで林檎拾ってる老人いてるやろ、車椅子の。あの人が林檎を取りに来た子供を車椅子で当てて怪我させたんやで」と言った。
老女が子供を轢いたてか・・

「私の林檎やぐらい思ってんのやろね、子供がハシゴを持って林檎を取りに来たのを見て、無言で車椅子で当たって行って・・まあ、足首を擦りむいただけやったらしいけど、親はカンカン、老女は悪びれる様子もなく帰ったみたいで」と奥さんは言った。
ひき逃げやないかーい!!

結局、どこに住む老女なのか誰も知らず、この時期にしか見かけない老女なので、もしかしたら近所の人ではないのかも知れない・・まさか、どこかから車で来て車椅子に乗り換えて・・・いやいや・・そんな事をする意味もない・・しかし何処の誰や・・

警察も「老女を見かけたらご一報を」程度で、必死に探している様子はないらしい。
拾うな危険、林檎事件はついに起こってしまったのである。

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