久々に家族と真鶴方面に出かけた。


そこで、お昼を食べようということになり、特に下調べもすることなく、ふらりと街道沿いの店に入ってみることにした。


何を食べようかと迷った挙句、 海の幸がふんだんに盛り込まれている（といううたい文句の）「おすすめ定食」なるものを食べてみることにした。


実はこのメニューを選択してみたくなったのは、 料理の内容というより、 「この店の経営姿勢をみてみようかな・・・」という興味からであった。


つまり、実に横柄な考え方なのだが、このお店が本当にお客さんにおいしいものを 食べてもらおうと思っているのか、実は昨日の残り物などを取り混ぜて自らのお店の利益を得るために「おすすめ」という冠詞をつけているのだろうか試してみたくなったのである。


しかし、私のそんな興味は、料理が来る前に結果が出てしまった。


なぜなら、こんな出来事があったからである。


私たちの隣の席で、７～８人の家族（お爺ちゃん、お婆ちゃんから孫とグループ）が 食事をしていたのだが、食事が終わって駅までタクシーを呼んで欲しいとお店のおばちゃんに頼んでいた。


お店のおばちゃんは、タクシー会社の電話番号を１０４で聞いて（おそらく、このお店は街道沿いのお店で殆どのお客さんが車で来るためタクシーなど頼むお客さんは殆どいないのだろう）いたのだが、生憎一番近い駅である真鶴のタクシー会社の電話番号が分からず、小田原のタクシー会社からタクシーを呼ぶことになった。


はたして、小田原からのタクシーは３０分以上はかかると言われたらしく、家族連れに「どうしましょう」と困って相談していた。

と、店の奥から店主らしきおじちゃんが、「うちの車で送ってやるよ」と声をかけてきた。


このお店から真鶴駅までは車で５分程度の距離なので、２往復して送ってあげるというのである。


この声を聞いて、一番うれしそうにしていたのはおばちゃん、「会長が送ってくれるって！」と実にうれしそうに家族連れに伝えていた。


会長とはまたすごい役職をつけたもんだ。


そんなやり取りとほぼ同時に、おばちゃんの「会長、今日も快調！　明日も快調！」という言葉とともに私の「おすすめ定食」が運ばれてきた。


「おすすめ定食」がどんなものであったかは、語るまでもない。

《いい話の広場》より