名古屋市熱田区の小島里子さん(75)が、地下鉄で買い物に出掛けた時の話。


途中の東別院駅から、いっぱいの荷物を手にした女性が大勢乗って来た。


この日は東本願寺名古屋別院の縁日だと気付いた。


小島さんが座っていた優先席の近くに、鉢植えや果物を両手に抱えた高齢の女性が立ったので「重たそうですね、替わりましょうか」と声を掛けた。


すると、「おみゃあさんも年はかわらんでええわ」と名古屋弁で言われてしまった。


あまりにも愉快だったので、あちこちで友達に話すと、みんな一緒に笑ってくれるという。


さて、その小島さんの高校三年のお孫さんの話。


ある日、テニスの部活動を終えて、地下鉄に飛び乗った。塾へ行くためだ。


車中でテキストを開いて勉強するうち、うとうとしてしまった。


ポンポンッと肩をたたかれて、ハッとした。


終点の徳重駅に着いていたのだ。


慌てて飛び降りる。


親切に起こしてくれたのは、会社員の男性だった。


すぐに追いかけて行き「ありがとうございます」とお礼を言った。


すると、こんな言葉が返ってきたという。


「無理するなよ！」


「孫は毎日帰宅するのが午後10時すぎになります。
それから夕食。
勉強にスポーツにと頑張っているのですが、少々疲れ気味なのをいつも心配しています。
そんな孫に、私に代わって粋で優しい言葉を掛けてくださり、ありがとうございました。
自分も年を取りましたが、若いころから席を譲るように心掛けています。
孫も、その男性の親切を忘れずに成長してほしいと願っています」と小島さんは話す。

《中日新聞掲載　2016年(平成28年)9月11日(日曜日)》いい話の広場より