中学校に届いた手紙の話。差出人は「江南市○○(名字) 88歳」と書いてあるだけだったが、こんな内容がつづられていた。
「先日、手押し車を押して踏切に差し掛かった時、千秋中の男子生徒五、六人に『こんにちは』と声を掛けられました。さらに『おばあちゃん、気を付けてね』とも。うれしくて涙があふれて止まりませんでした」
川口さんは、「『こんにちは』の一言が、なぜそんなに、おばあちゃんの心に響いたのか」と不思議に思い、「何か、つらいことがあったに違いない。だから、一言が琴線に触れたのだろう」と推測。
投稿では「手紙を生徒に披露し、一言が人を感動させられる場合もあることを教えたい」とつづっていた。
「ほろほろ通信」に掲載後、再び、おばあちゃんから手紙が届いた。
そこには「新聞読みました。私の気持ちが生徒さんに届き喜びにたえません。
実は、長男が病気で毎日つらい思いをしています。
でも、やさしいお嫁さんに助けられて感謝の日々です。
そんな中であの子たちに出会いました。
一生忘れません」と書かれてあった。
川口さんは「やっぱりそうだった!」とうなずいた。
実は、川口さんにも忘れられない「一言」がある。
十六年前、同居していたおばあさんが、91歳で亡くなった時のこと。
晩年、「足が痛い」と訴え、好きな畑仕事ができなくなった。
やがて体調を崩して入退院を繰り返し、ベッドで苦しんでいた。
「ずっと付き添ってくれた看護師さんが臨終後、おばあちゃんに話し掛けてくれたのです。
『今までよく頑張ったね』と。
言葉の大切さ、そして重みを今後も子どもたちに伝えていきたいです」と川口さんは話す。
<中日新聞掲載 2017年5月14日>いい話の広場より
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