山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

自作の超短編小説を公開しております。
目次です。※作品数が増えてきたので十作ずつに分けました。
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目次(超短編小説)

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 老人がかつて経験した長い旅について話していた。 


  「昔、私は買ったばかりの潜水服を着て意気揚々と海の中に入っていった。海底を適当に歩いていけば別の大陸に行けるはずだという大雑把な目論見が頭の中にあったから地図は持参していなかった。海底には道や標識などはないし、ちょっとでも深くまで進むと日光が届かなくなるから暗くなる。それで、灯りが恋しくなって光がある方向に進んでいくと他人と遭遇する。私以外の旅人達はほとんど必ず懐中電灯を持参しているみたいだったよ。私はいつも何も見えないような暗闇の中を歩いていたから足を踏み外して崖の下に転落していった経験が何度もある。頑丈な潜水服を着ていたから身体は無事だったけどね。それで、どんどんと深海に潜っていったのだけど、どこまで落ちていっても結構な頻度で他の旅人達と遭遇する。しかし、互いに潜水服を着ているから会話はできない。ただ、中には親切な旅人がいて私に予備の懐中電灯を手渡してくれたし、深海から浅瀬まで案内してくれた。私はそのまま陸地に上がってみたのだけど、そこは私が出発した故郷の街だったよ。どこか別の大陸に行きたいと願っていたから私は心の底から落胆したよ」