昨年十一月に多発性骨髄腫に保険認可されたダラツムマブ。すでに五百人以上の難治性(もう治療の反応性が乏しい)の患者さんに投与されているそうです。日本での効果のほどはこれからの報告待ちですが、欧米と同じような反応であればとても期待できると思われます。また昨年のアメリカ血液学会でも新規骨髄腫患者の治療におけるかなりいい報告も出ているようです。(新規診断多発性骨髄腫はMVPよりもダラツムマブを加えたD-VMPの方が有効【ASH2017】

いつもいい薬が出た後思うことは、あの時の患者さんに使うことができたらという思いです。そしてAPLのATRA、CMLのイマチニブ(グリベック)、リンパ腫のリツキシマブのように、今後当たり前のように使われるようになり、治すことができなかった骨髄腫の患者さんが治癒する(治療をやめても再発しない)時代が来る予感がしています。そうはいっても現状まだまだ難しいのは事実です。以前のセカンドオピニオンを含めた記事です。

ニボルムマブ(PD-1:オプジーボ)のように、このダラツムマブは直接の抗骨髄腫作用以外に、免疫に関与して骨髄腫を治癒させることが想定されています。でも完全なる証明はできていません。免疫関連の詳細な機序は正直全く不明です。そして製薬会社は売るために見てきたような仮定を話しますw でも効くことは間違いないようですので製薬会社のCMには踊らされないようにしています。

このダラツムマブ、iMid(レナリドマイド、ポマリドマイド)含めて、私は免疫モジュレーターとして使うことで正直多発性骨髄腫だけの薬に止まらないのではと感じています。一般的な腫瘍を減らすための分子標的医療薬の併用は必須だと思いますが、肺がんなどの他のがん種にも応用できるのではと感じています。(仮説です。骨髄腫だけかもしれません)

骨髄腫の治療が進歩したのは、2006年度以降3種の神器(サリドマイド、ボルテゾミブ、レナリドマイド)と言われる新規治療薬が出てきたからです。その後臨床では次から次に新規治療薬が出現し、現在は今までの抗がん剤を除いて8種類が日本で使えます。(多発性骨髄腫、新薬ラッシュ 組み合わせで治療前進 血液がん=訂正・おわびあり)そのうち新規骨髄腫(以前に治療していない骨髄腫)で使えるのは2種類。使用頻度も薬によってかなり違うようです。(少なくとも1種類は私は使う気がありません。ヨーロッパの有名な先生と同じ意見で嬉しく思いました)

日本骨髄腫学会の重鎮鈴木先生の言葉です。
>「ダラツムマブの登場で、多発性骨髄腫の治療戦略は大きく変わる。いわばルネサンスをもたらす薬剤」と鈴木氏。これまで(1)治癒を目指し再発をさせない治療をする群、(2)治療継続にてDisease Controlを目指す群、(3)緩和ケアにより苦痛の少ない治療を提案する群の3群に分けられていた多発性骨髄腫の治療戦略だが、ダラツムマブにより今後は(1)群が大きく増加するという。「これからはどのようにMRD陰性を獲得し、治療を止める(=治癒)かがポイント」(鈴木氏)

>最後に鈴木氏は「現在は、ダラツムマブなどの新規薬剤で生存延長の期待が高まった状態。今後はこれら新規薬剤が初発で使えるようになることで多発性骨髄腫が“死なない病気”に、そして“治癒できる病気”へと進み、最終的には“予防できる病気”となること」を今後の展望として語った。

予防はまだどうかと思いますが、同意しています。それぐらい歴史を変える薬です。

PS:先日の記事でキレるという言葉を使い、現状の医療現場での医療以外の対応への激しい怒りをブログ記事としましたが、患者対応は大人としてちゃんと行なっています。BLOGOSのみなさんの優しい叱咤激励感謝します。

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