ありがとうを求めるのは、どんな仕事でも同じ。
彼の仕事は、ソムリエ(sommelier:フランス)。彼がソムリエの道を選んだのは、子供の頃、家族で出かけたレストランでの出来事だった。いつも無愛想で、息子にも母親にも挨拶をしない父親が、注がれたワインを飲みながら、なぜか、その注いだ男に「Merci(ありがとう)」と声を掛けた。その意味を知りたくて、彼は父親の仕事を継がず、ソムリエになった。
数年後、駆け出しのソムリエとして、日々忙しくしている時、父親が病で倒れたのを聞く。いつか飲んでもらおうと、安月給の中から貯めて買った1本のワインを病室に持って行った。「舐めるだけよ」と、たしなめる母親。その言葉も聞かず、父親は一口で飲み干して、こう言った「Merci beaucoup(本当にどうもありがとう)」
彼にとって、初めてのありがとうだった。父親にとって、最後のありがとうだった。
………………………………………………………………………
●ブログランキングに参加しています。(別窓で開きます)
※読み終えたら、ポチッとクリックをお願いしま~す!!