親子教室の生徒さんたちには、「今月中に100局」を目標に、自宅での練習将棋をやってくださいお願いしていますが、駒の動かし方とルールを覚えたばかりの状態で、果たして対局が成立するのだろうかと、少し心配になってきました。そこで、序盤の代表的な指し方を1つご紹介しておくことにします。
将棋は、相手の弱点を探して、そこを攻撃するのが上手な指し方で、これこそがもっとも基本的な考え方といえます。
まず、図1の初形図をみてください。後手陣の弱点がどこだか分かりますか?
(図1 初形図)
正解は「2三」の地点、すなわち「角」の頭なのです。「角」はナナメには強い駒なのですが、1つ前に進むことができません(これを「頭」が弱点と言います)。同じように、1つ前に進むことができない駒に「桂」があります。「角」と「桂」は1つ前に進むことができないため、「歩」で取られてしまう危険があるという大きな弱点を持ち合わせているのです。初形図では、「桂」は後ろの方にかくれていて安全な場所にいるのですが、「角」の頭には「歩」が1つ守っているだけの状態です。ここを弱点とみて先手は攻撃を目指します。先手だけ駒を動かして説明すると、▲2六歩~▲2五歩(図2)という「飛」の上の「歩」を進めていく指し方が良いのです。
(図2 ▲2五歩まで)
図2の局面からは、さらに▲2四歩と進めて「歩」と「歩」がぶつかります。これに対して後手は▽2四同歩と「歩」を取ります。先手が先に「歩」を1枚損したように見えますが、先手もすぐに▲2四同飛(図3)と「歩」を取り返すことができるので、損得なしです。もし、図3の局面で先手の手番だったとしたら、どう指せばよいでしょうか?
(図3 ▲2四同飛まで)
正解は▲2三歩(図4)です。これで、先手は後手の「角」を「歩」で取ることが確定します。これが、最も基本的な、「角」頭の弱点を狙う指し方となります。
(図4 ▲2三歩まで)
次に、後手が「角」頭(2三の地点)を「金」で守ってきた場合の攻め方をご紹介します。
先手に▲2四歩と攻められる前に、後手は▽3二金(図5)と守ってきます。ここで、先手が先ほどと同じように攻めていったらどうなるのでしょうか?
(図5 ▽3二金まで)
図5から▲2四歩、▽2四同歩、▲2四同飛、▽2三歩(図6)となって、先手はこれ以上攻め続けることはできません。図6以下、先手が▲2三同飛成と「歩」を取っても、▽2三同金とされて大事な「飛」を取られてしまい先手の攻めは失敗します。これが、後手が▽3二金(図5)と守った効果なのです。
(図6 ▽2三歩まで)
そこで、登場するのが、「棒銀」(ぼうぎん)戦法です。先ほど先手の攻めは、「飛」1枚による攻撃だったのですが、「棒銀」はこれに「銀」を加えた2枚の駒で「角」頭を攻めようとするものです。もう一度、図7の局面を見てください。「角」頭である「2三」の地点への後手駒の利(き)きの数は「金」1枚だけですが、先手は「銀」と「飛」の2枚を利かして突破を狙います。ただし、すぐに▲2四銀と進むと▽2四同歩と「銀」を取られてしまいますので、ちょっとしたテクニックが必要になります。
(図7 ▲2五銀まで)
そのテクニックとは、▲2四歩(図8)という手です。これは、持ち駒の「歩」を相手の「歩」の利きのところに合わせるように打ち下ろすことから「合わせ歩」の手筋と呼ばれるものです。
(図8 ▲2四歩まで)
▲2四歩には後手も▽2四同歩と取る一手ですが、そこで先手は▲2四同銀(図9)と「2四」の地点に「銀」を進めることに成功しました。次に▲2三歩と打たれると「角」取りとなってしまうため、後手は▽2三歩と打って受けますが・・・。
(図9 ▲2四銀まで)
図9で後手が▽2三歩なら、▲2三同銀成、▽2三同金、▲2三同飛成(図10)となって、「龍」をつくった先手の攻撃が成功します。後手玉を詰ますまではまだ手数がかかりますが、先手は有利に戦いを進めることができるはずです。
(図10 ▲2三同飛成まで)
いかがでしたでしょうか?最初は見よう見まねでかまいません。お互いに相手の「角」頭を狙って攻撃を仕掛けてみてください。詳しい解説は次回の親子教室で行いたいと思います。