楽譜が立てられマイクが用意されたグランドピアノで、講師のサポートを受けながら弾き歌いをしている小さな男の子

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みなさんこんにちは、
FUKUON 福田音楽教室 ピアノ講師&音楽療法士の福田りえです。


5月22日、山響楽器店の2Fホールにて、ピティナ・ピアノステップ横浜緑春季が開催されました。その中の「ドマーニ部門」は、障がい児者のためのサポート付きステージとなっています。


私も「協力」という立場ですが、ドマーニ部門に携わらせていただいています。


このドマーニ部門では事前に…

  • 一人ずつの障がいの症状や今の状態
  • 今までのピアノレッスン経緯
  • それぞれの参加者にとっての目的や目標

…などを、アドバイザーの先生方にご理解いただき、スタッフの方々と椅子の配置などを綿密に打ち合わせした上で行っています。


またご来場いただいたみなさまの理解を促すために、協力という立場の私から、ドマーニ部門について説明をさせたいただいています。


今回で5回目の開催となるドマーニ部門ですが、はじまる前は保護者の方々が大変緊張されます

  • うちの子はステージでいつも通り出来るかなぁ
  • 固まっちゃって動かなかったらどうしよう
  • 泣き出しちゃったらどうしよう
  • ちゃんと静かに待てるかしら?

そんな不安なお気持ちを抱えたまま、離れたイスからステージの我が子を見守っていらっしゃいます。


そんな様子を拝見し、「何があっても対応しますので、大丈夫ですよ~」とお声をかけるのも、毎回恒例の流れとなっています。



子どもたちの成長に驚かされたドマーニ部門を写真でピックアップ


さて今回私のピアノ教室からは、4歳~中2まで12名の障がいのある生徒さんが参加してくれましたので、ピックアップして写真とともにご紹介します。


グランドピアノに座る小さな男の子の前に、開いた楽譜を置こうとしている女性
レッスン中は走り回っていた男の子。なかなかピアノに向かうことができませんでした。しかし2年半の時間を経て、ピアノを弾きながら歌えるまでに成長しました。


水色のドレスを着てステージ上のグランドピアノを弾いている女の子
ピアノを習いはじめて6年目の女の子。去年4月に成長ホルモンの注射をはじめてからは身体も大きくなり、姿勢も安定して、両手奏ができるまでになりました。


黒い子ども用のスーツを着てグランドピアノを弾いている男の子
前回のドマーニ部門では、16小節ほどの短い曲で参加した男の子。今回はモーツァルトの『トルコ行進曲』を半分まで弾けるように。その成長ぶりに、私も途中で感涙してしまいました。


ドマーニ部門に限らず演奏のステージごとに、生徒さんの衝撃的な成長パフォーマンスに驚かされています。



障がいを持つ子の発達を促す、ピアノ・音楽を通じた社会とのつながり


ドマーニ部門が終わると、木更津から来られた神子真由美先生がお声をかけてくださいました。20数年前にダウン症の女の子にはじめて出会われて以来、今も障がいのある生徒さんを指導されておられます。


私の活動にもご理解いただいて、「次回のドマーニ部門に生徒を参加させたいのですが…」と仰ってくださいました。


発達障害、身体障害、知的障害、難病と、子どもたちの抱える障害はさまざまですが、音楽やピアノを習うことで発達を促し、成長の手助けとなります。


また日々レッスンを積み重ねることが、挨拶やお辞儀、お礼を言うこと、目を見て話す、静かに待つ、返事をする、意思を伝える、自分で選択するなど、基本的な所作を身につけることにも繋がります。


もちろん発達や成長、所作の習得には時間がかかります。障害の程度が重いほど、進歩を感じるまで気が遠くなるほどの時間を必要とするかもしれません。


しかし今回のドマーニ部門のステージを見るにつけ、やっぱり子どもたちは成長しているんだなと、感じずにはいられません。


ひと口に「発達障害」と言いますが、発達しないわけじゃないんですよね。発達も成長もしますし、学んだことはできるようになり、自分の思いを伝え、表現することだってできるようになるんです。


その上で、このような外部での演奏の機会、人前でピアノや楽器を弾く機会、自分を表現して人に評価される機会というのは、また別の成長へのキッカケを与えてくれると思います。


それは端的に表すと「社会とのつながり」を得ること、と言えるかもしれません。


外部での演奏に勇気を出して参加することで、絶対的自分中心だった世界から足を踏み出し、人々を見て、他者を知り、社会的活動を経験する。そしてそのことで、相対的な自分を知ることになります。


失敗したり悔しかったりすることがあっても、それは社会に触れたことで得られる結果であり、障害のある・なしに関わらず、いずれ通過していかなければならない、成長のステップです。


親御さんにとっては子どもの「悔しい」という感情の発露そのものが、成長を感じさせる光となることだってあります。それも、社会に関わろうとしたからこそです。


人前での演奏の場に出ていくことが、自分を知り、社会とのつながりを感じるための、良いチャンスを与えてくれるのです。


そのためにはドマーニ部門のような、サポートや支援が受けられるステージがもっと必要です。


上述したように、保護者の方々は不安な気持ちを抱かれるわけですから、突発的なミスや失敗が起こりうることを前提とした、チャレンジしやすい環境作りが大切だと思います。


障がいを抱える多くの子に、音楽・ピアノという表現方法を身につけて、社会とつながる接点が持てるように、これからも支援を続けていきたいと考えています。



次回のピティナ・ピアノステップ/横浜緑秋季は2016年10月16日、申し込みの締切は9月12日となっています。


今のところドマーニ部門があるのは、この横浜緑地区のステップだけ。たくさんのご参加をお待ちしております。


FUKUON 福田音楽教室 福田りえ


※この記事は2016年5月26日に公開し、2020年6月16日に加筆・編集してリライトしたものです。あくまで公開当時における内容となっていますので、今現在の状況を反映しているわけではありません。