misty green and blue

Life is like an onion...

雪の断章

2017-07-30 | books


迷子になった5歳の孤児・飛鳥は親切な青年・祐也に救われる 引き取られた本岡家での虐待に耐えかね、お使いの途中だった7歳の飛鳥に救いの手を差し伸べたのも、彼だった
両親への思慕の念もなく、強情っぱりな飛鳥は祐也との出会いを“運命”と信じるも、なかなか他人を信じ切れず、自分の殻を打ち破ることが出来ない
そんな頑なな心が時に厳しく時に温かく接する周り人々との交流を通じて少しずつ変化してゆくも、ある毒殺事件をきっかけに心が激しく揺れ動くのだった.....

真犯人を悟るも自身の胸に秘めることを決意すると共に祐也への恋慕の情を封印、一度は祐也の親友・史郎の求婚に応じる飛鳥
飛鳥から“偽善者”と言われたことに心を痛め、自身の想いを打ち明けられず、史郎との結婚を容認する心優しき祐也
飛鳥の家出をきっかけに彼女との結婚を心に決め、憎まれ口をたたきつつもさり気なく労わりの情を示す、殺人に手を染める史郎


人を殺めた史郎は、裁かれるべきだ
けれども、彼を責める気にはなれない.....

彼もまた飛鳥同様、心に深い闇を抱えていた―
自害後、飛鳥に宛てた遺書が......切ない

 俺は羨ましかった お前の芯の強さも祐也のたくましさも
 二人が不思議なめぐり合わせで一つの場所に生き分ち合っていける運の強さも

 俺は本岡聖子を殺した
 今この場に及んでも悔いはない
 しかし罪の重みを感じたのはお前に容疑が向けられた時だった

 なぜ殺したのか
 俺は権力の横暴を許せなかった
 私事の感情で業務を支配する本岡剛造を敵視した
 
 聖子が俺に言った 欲を出すとお父さんのようになるわよと
 
 荒れすさんでいた俺の気持ちを鎮めてくれたのはお前だった
 本岡家によって歪められてしまったと自分だけで決めて深刻そうにしているのが可愛らしかった
 どこのどんな男にも渡さないと決めていた

 神戸転勤がもち上がった
 新しい土地でチビと暮らしたいと思った


 俺の罪を隠したのは何故だ
 殺人者と知っていて仮にも一度は結婚しようとしたのは何故だ

 ありがとうチビ、俺なりに解釈してその気持ちを受け取った
 お前は自分の本岡家への恨みと俺の聖子への恨みをダブらせて俺を理解してくれたのだ

 俺は満足だ
 俺の生き方を理解してくれていた者があったということだけで
 そして、その理解者が自分の愛した娘だったということだけで
 
 
 チビ、うんと幸せになるんだぞ

Cross My Heart and Hope to Die / Sentenced
 


 




1年位前から気になっていたが、400頁を越す長編だったことにやや躊躇いがあった

飛鳥と祐也の行く末を知りたいと思った
でも、作家の佐々木丸美は既に故人だった....

残念である


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