向かい飛車 第30回JT杯2回戦第1局 佐藤康光-深浦康市 棋譜検討(康光流陽動向かい飛車) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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【棋譜DB】
第30回JT杯2回戦第1局 佐藤康光-深浦康市

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先手:佐藤康光
後手:深浦康市

▲7六歩    △8四歩    ▲7八銀    △3四歩    ▲7七角    △8五歩
▲2六歩    △3二金    ▲6六歩    △5四歩    ▲6七銀    △6二銀
▲8八飛
(下図)

佐藤先生が時折見せる陽動振り飛車。
その原型として思い出されるのが、この一局である。

戦法名がハッキリしていないので、
とりあえず「康光流陽動向かい飛車」としました。

名前呼び捨てで申し訳ないんですが、
康光流現代矢倉 とか注釈康光戦記 とか、
著書に下の名前を使っているイメージが強くてですね・・・
(佐藤姓が多いからでしょうけど)

今の目で見ると、▲2五歩を決めていない点が目に付きます。
最近は▲2五歩(△8五歩)を決めるんですよね。

上図以下
△4四角    ▲2五歩(下図)

▲2五歩を早めに決めるようになった理由は上図ですかね。
△4四角と上がられて▲2五歩と突くのであれば、
▲2五歩△3三角を決めた方が得である、と。
記事をあらためて書く予定ですが、△4四角(▲6六角)はよく出てきます。

上図以下
△4一玉    ▲3八銀(下図)

▲3八銀では▲3八金とする形もある。

▲3八金を用いる場合は、後手の囲いが矢倉系という印象。
▲2五歩型・△矢倉という構図では、△3五歩~△3四銀の筋が生じますが、
▲3八金型の方が、上部からの攻めを受けやすい、という事ですかね。

上図は、後手が盛り上がってくるイメージが無いので、
▲3八銀でも支障なし・・・という判断なのかな。
まぁ、美濃で良いなら美濃にしたいです。

上図以下
△5二金    ▲4八玉    △4二銀    ▲3九玉    △3一玉    ▲5六銀
△3三桂
(下図)

ただ、本局の場合は△3三桂で歩を狙ってきます。
ミレニアム調で指せるので、リスクが少ないです。
今のところ、△2五桂には▲4五銀がありますが。

上図以下
▲4六歩    △7四歩    ▲5八金左  △1四歩    ▲3六歩    △1五歩
▲4五歩    △5三角    ▲6五歩    △2一玉    ▲4七銀引
(下図)

ここまで進むと、△2五桂もありえそうな感じはする。

もし、△2五桂だったら、
▲4六銀~▲3五歩と角筋を止めるか、
もっと軽く▲3五歩と捨てていくか・・・

しかし、△2五桂の後、後手に歩をもう一枚渡すと、
△1六歩▲同 歩△1八歩▲同 香△1七歩で、
香車が取られてしまうような筋があって、
△7三桂や△7五歩に重みが出てしまうのは気になります。

△2五桂の局面は、どちらかと言えば後手を持ちたい気もしますが、
桂を跳ねると玉形が大分薄くなるので、勝率の低い手なのかもしれない。

上図以下
△7三桂    ▲6八飛    △5一銀右  ▲3七桂    △3一銀(下図)

本譜は、深浦先生が玉形を引き締めている間に、
▲3七桂の受けが間に合いました。

上図以下▲6六飛(下図)

凄い手ですよね。

△8六歩▲同 歩△同 角には▲3五歩で勝負ですか。
△5五角の筋があるので、それも難しいと思いますが、
後手は堅く囲う手順に入っているので、仕掛けにくい意味もある。

そもそも、▲6六飛がどういう意味なのか、
パッと見で分からないしなぁ・・・

上図以下
△4二銀右    ▲7五歩(下図)

そっか、ここから・・・

△同 角なら▲7六飛△6五桂▲6八角が予想手順の一つ。
以下は▲7七桂ぶつけや▲3五歩の筋が狙いでしょうか。
そう進んでも難しいけど、後手陣が未完成なのがどうか。

上図以下
△同 歩    ▲3五歩    △同 歩    ▲2六飛(下図)

△7五同歩は穏やかな応接ですが、
▲3五歩から飛車を振り戻したのがダイナミックな構想。
2筋で一歩手にすれば、3四に打つスペースがあります。

上図以下
△6五桂    ▲9五角    △7二飛    ▲2四歩    △2二銀    ▲2三歩成 
△同 金
(下図)

しかし、いつもながら深浦先生がしぶとい・・・
形を歪ませながらも、決め手を与えませんね。

上図から▲6六歩は方向違いで、
△1六歩▲同 歩△3六歩▲同 飛△1八歩から香を取られる。

上図以下
▲2四歩    △1三金(下図)

大きな拠点が出来たけど、
▲1六歩には△3六歩▲同 飛△2四金と払われる筋があるので、
先手はもっと急いで攻める必要がある。

上図以下
▲7七桂    △同桂成    ▲同 角    △7六歩(下図)

△7六歩は際どい一手で、手堅く指すなら△3四桂。

上図は▲2五桂打や▲3三角成~▲2五桂打がかなり怖い。
ギリギリのところを通さないと勝てないと見たのだろうか。

上図以下
▲6六角    △3四桂    ▲5六飛    △7四飛    ▲2五桂打  △同 桂
▲同 桂    △2四金
(下図)

歩が払えては後手好調を思わせる。

上図以下
▲2二角成  △同 玉    ▲6六桂(下図)

△2五金▲7四桂△3六桂とシンプルに指す手もあった?
本譜は佐藤先生の猛攻が開始された。

上図以下
△6四飛    ▲5四桂    △2五金    ▲4二桂成  △同 金    ▲5三飛成 
△同 金
(下図)

上図は先手がチャンスに見えるんですが、具体案が難しい。
端の位が大きい上に、△6九飛成~△2七桂や△3六桂が早いので。

完全に逃げですけど、形勢不明とさせて下さい^^;

この将棋に自信が持てなかったのか、
佐藤先生は暫くこの戦法を封印した。
アマの目にも採用が目立つようになったのは、昨年度からである。

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